――IHIステージアラウンド東京は舞台の中心に360度回転する円形の客席がある。観客は回転する客席から四つのステージを見る。迫力に満ちた演出がかなう一方、稽古は大変だった。

鈴木:四つの舞台を並行してやっている感覚に近かったです。稽古場には4面分のセットの位置がテープの色を変えて貼ってありましたが、鉄道の路線図のようで混乱することもありました。

 マスクをしているので、お芝居もみんながどういう表情をしているのか、目だけで想像しながらやるしかない。演出家さんも大変だったと思います。マスクを取ったら、期待していた表情と全然違ったということもあるかもしれないので(笑)。

 特に難しかったのは、客席の回転スピードと歩幅を合わせることでした。速度が合わないと舞台から消えてしまうし、今までとは違う集中力が必要でした。稽古中はキャスト同士も距離を取ることを徹底していたので、会話も減ります。そのなかで、アクションをして時間を計ったりしながら、息を合わせていくのはとても難しかったですね。現場に入るまでは、完全には理解しきれず、想像力で補完しなければならなかったことも多くありました。

 ただ、稽古場から大きな桜の木が見えて、休憩時間とか、なんとなくみんな桜を見ながら感情を共有している感覚がありました。言葉にはしないけれど、「今みんなで癒やされているよね」という。そんなコミュニケーションもいいなと思いました。

■もっと大人になりたい

――息をのむほどの激しい殺陣(たて)も見どころだ。初出演のキャストは誰かが常にサポートをする、チームワークがある。

鈴木:毎回、新キャストはいますし、殺陣をまったくやったことのないメンバーもいます。なので、座組として誰かが世話を焼きにいくスタイルはできあがっているように思います。

 僕も稽古中はもちろん、稽古時間外で練習しているときも、自分の稽古をしつつ全体を見るのが癖になっていて。稽古が始まって1、2週間は一緒に残って木刀を振っていました。木刀を振り続けていると、壁に当たったり、疑問を感じたりする瞬間がきっとあるんです。そうなっているなと感じたら、アドバイスをしにいきます。

 初演のときを知っているから、いま、みんながこの短期間で殺陣をできるようになるのはすごいなと思います。

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