佐藤裕之(さとう・ひろゆき)/1961年、秋田市出身。一橋大学卒。ウェンティ・ジャパン社長。グローバリゼーションの本質を語った(撮影/梶原将氏)
佐藤裕之(さとう・ひろゆき)/1961年、秋田市出身。一橋大学卒。ウェンティ・ジャパン社長。グローバリゼーションの本質を語った(撮影/梶原将氏)

 秋田の洋上風力発電は、米ゼネラル・エレクトリック社製の風車の保守・点検を地元で行っている。あくまで地元にこだわるには理由がある。AERA 2021年5月31日号で、「秋田風作戦」会長の佐藤裕之氏が語る。

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 私たちが22基の風車を動かしている「秋田潟上(かたがみ)ウインドファーム」は、200億円弱のプロジェクトですが、これから参戦する洋上風力は10倍以上の事業規模になります。

「風は地元の資源だから私たちで運営する」と声高に主張しても、現実にはそれだけの資本を秋田県内だけでは集められません。県外の大手と組むときには、「キャスティングボートをとる」ことが大事な戦略です。

 中央大手だけの植民地にはしたくない。地元の利害調整は我々に任せてほしい。「地域資本主義」のような考えを理解してほしいと言い続けてきました。周辺産業や漁業振興、環境面への配慮など地元の声を拾って、再生エネルギーによる新しい地域社会を一緒に作っていく気概を持ってほしいのです。

 今度の洋上風力発電の公募には、長年の経験でコスト縮減のノウハウにたけた欧州の企業も名乗りを上げているので、熾烈(しれつ)な戦いになると思います。

 政府の「審査」は、240点満点のうち「地域経済への波及効果」は10点だけです。再エネ電力の調達コストを下げて国民負担をとにかく下げよう、という考え方が前面に出ました。

「東北独立論」という考えがあります。東北と新潟県を足した人口は1100万くらい。この地域の域内総生産(GRP)は欧州の小国と同じくらいなので、十分独立できる。エネルギーも食料も水もすべてある。正しい価格で東京に売って利益を地元に落としたら、日本で一番豊かなエリアになるんじゃないか。それなのに最も貧しいという現実は、これから変わらざるを得ないと思っています。

「秋田風作戦」(106団体)は設立して8年経ちましたが、陸上風車建設のピークが終わっても新規申し込みがあります。

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