30代は国内株式、海外株式、海外債券にバランスよく投資するため「eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)」に全体の約6割=月2万円を振り分けた。野村アセットのバランス型も使いつつ、日本株と全世界株式の投信もトッピングしている。

 40代以降は国内債券の比率を高めて海外株式や国内株式の割合を減らした形。ただし、REIT(不動産投信)を含む海外債券の比率をあまり落とさないことで、安定的な収益を目指せるように設計してある。

 総じて、バランス型投信をうまく使いつつ株式と債券の割合をコントロールした、王道のポートフォリオといえるだろう。

 一方で、何本も買うのは面倒だし、投信を切り替えるのも手間……という人もいる。ファイナンシャルプランナー歴33年の深野康彦さんは、「投信1本だけを積み立て続けるのも悪くない」と語る。

「資産というのは、貯金や不動産と併せて考えるべきだと思うんですね。給与を円でもらっていて、貯金もある。マイホームを買った人も多いでしょう。今の日本人は円にベットしすぎで、投信は資産全体から冷静に見ればわずかな割合の世帯が多いんです。きちんとしたポートフォリオを組んでリスクを低減するのは正しいやり方ですが、迷いすぎて投資しないぐらいなら株式投信1本に全振りでOK」

 1本でいく場合、「eMAXIS Slim全世界株式(除く日本)」がおすすめだという。今は米国株が絶好調なので、この投信の中でも「アメリカ」の比率が60%超だが、今後、たとえば中国株が米国株を抜けば、比率は勝手に変わる。つまりリバランス(投資配分の見直し)の必要もないというわけだ。

■2倍増で半分貯金

 ただ、リタイア後にお金を引き出そうとしたとき、たまたま株の暴落時だったら? これまでの積み立てが水の泡……。

「全世界株式1本で運用するなら、たとえば『資産が2倍に増えたら全体の半分を貯金に移していく』など、徐々に円へシフトしていくのはどうですか。最初は株式100%で、お金が増えるごとに少しずつ貯金部分を増やすイメージ。人生100年時代、気長に運用しましょう」

 つみたてNISAは最長20年。40歳で始めても60歳で終わり、そこから長生きする人は40年ある、と。確かに。

「なるべく若いうちから月3万円前後を全世界の株式に投資し続けることが、将来不安に対する確かな自己防衛法になるのは間違いありません」

(経済ジャーナリスト・安住拓哉、編集部・中島晶子)

AERA 2021年5月31日号より抜粋

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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