東京五輪・パラリンピック公式マスコットを背に記者団の質問に答える菅首相/5月12日、首相官邸 (c)朝日新聞社
東京五輪・パラリンピック公式マスコットを背に記者団の質問に答える菅首相/5月12日、首相官邸 (c)朝日新聞社
AERA 2021年5月31日号より
AERA 2021年5月31日号より

 国会の会期末が迫る中、政府は出入国管理法の改正案の成立を今国会で見送った。一方で、国民投票法などの重要法案が続々と審議入り。背景にあるのは内閣支持率の急落だ。AERA 2021年5月31日号から。

【図】菅内閣の支持率は?

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 急転直下の出来事だった。5月18日、与野党で修正協議が続いていた出入国管理(入管)法改正案の成立見送りが決まった。事実上の廃案だ。入国管理を所管する入管庁にとって同法の改正は悲願。どうしても、今国会で改正しておきたかった。

 実は6月16日の会期末に向けて国民投票法改正案、LGBTなど性的少数者をめぐる「理解増進」法案、そして、冒頭の入管法改正案が自民党によって提出された。五輪憲章で「性的指向への差別の禁止」を謳(うた)っているオリンピック・パラリンピックを前に、「差別の禁止」ではなく「その理解を増進する」という、とってつけたかのような法案の提出に、立憲民主党などは「性的指向及び性自認を理由とする差別は許されないものであるとの認識の下」という一文を加えなければ法案審議には応じられないと徹底抗戦した。

 しかし、この修正案を受けて開かれた自民党の関係部会では「道徳的にLGBTは認められない」「法を盾に裁判が乱発する」など参加議員の大多数が反対。特命委員会の稲田朋美委員長は対応に追われた。初めて国会議員でLGBTの当事者であることを公言した立憲民主党の尾辻かな子・衆議院議員はこれらの発言を受け、「だから(差別を禁止するという内容を盛り込んだ)立法が必要なのです」と同日、ツイッターに書き込んだ。

■解散前に法案進めたい

 国会会期末近くになって、国民投票法をはじめ保守性の強い重要法案が続々と審議された。その理由について、ある自民党幹部は一連の法案の実際の審議は、次の解散総選挙後に始まると語った上でこう続けた。

「解散総選挙後の国会構成が、現状維持ならともかく、それも雲行きが怪しくなってきた。続落する内閣支持率を浮揚させる武器は、五輪開催とワクチン以外にない。しかし、五輪を開催した結果、今以上にコロナが拡大すれば、取り返しがつかない事態になる。だから数の上で圧倒的優位な今、前に進めたい法案は進めようということです」

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