■唯一無二の味

 カップヌードルは、これまで200種類以上のフレーバーを発売してきた。オリジナルの味に加え、「シーフードヌードル」「カレー」「チリトマトヌードル」が長らく4大定番として君臨してきたが、昨年、「味噌」がチリトマトを抜いた。「しお」「欧風チーズカレー」「旨辛豚骨」といった次の定番候補も育ってきている。その一方で驚かされるのは、50年間、売り上げの1位は一貫して一番最初のカップヌードルだということだ。

 実は、カップヌードルはしょうゆ味ではなく、コンソメ味がベースになっている。百福さんが、当初から世界に向け販売することを考えていたからだ。

 日清食品マーケティング部のブランドマネージャー・白澤勉さん(47)は言う。

「カップヌードルは、一般的なラーメンとも違う唯一無二の味なんです。それが受け入れられ、色々なカップ麺を楽しみながらも、戻ってくる『おふくろの味』になっています」

 カップヌードルが半世紀にわたって支持されてきた理由を、白澤さんは次のように話す。

「食材の変更や増量など、小さな変更はありましたが、味やパッケージのデザインなど基本的な要素は50年間変えずに守ってきました。それが支持されてきた理由の一つではないかと思います。環境に配慮して容器を紙に変えたときも、容器の縁に口が触れたときの感触が変わってはいけないと、わざわざこれまでの容器と同じように縁を角張らせる加工をしました」

■型破りなCMの理由

 一方、「変わらない」ことは信頼や安心感を呼ぶが、ブランドの老化やマンネリも招きかねない。カップヌードルでは「変えない部分」を大事にしつつ、同時に「新しさ」も創出し「ブランドの鮮度」を保ってきた。そのときどきのトレンドや話題を取り入れたスポット商品の展開に加え、CMが大きな役割を果たしている。

 原始人とマンモスなどが登場した「hungry?」シリーズや、平和をテーマにした「NO BORDER」シリーズをはじめ、カップヌードルのCMにはユニークで記憶に残るものが少なくない。

 宣伝部部長の米山慎一郎さん(51)は次のように語る。

「広告の目的はマインドシェアの獲得で、消費者がスーパーやコンビニに行ったときに、いかにカップヌードルを想起するかが大事なのです。メインターゲットは若者です」

 青春時代にカップヌードルを原体験してもらうことを重視している。その若者たちがやがて家庭を持ち、子どもにも食べさせるようになり、世代をつなぎ食べ続けられるからだ。

 それにしても、型破りなCMが少なくないのはなぜか。

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