いまの混乱は一時的なものだとも思います。私のクリニックでは5月10日から80歳以上の人たちの予約を始めました。初日こそ受け付け開始時刻に約70人の方がクリニックの前に並びましたが、2日目からは落ち着いて予約を受け付けることができました。最初の3日間で特に混乱もなく、約400人の方が予約されました。


 全国的にみても、今の混乱状態が6月や7月まで続くとは思いません。

 ただし、不安要因はあります。感染状況です。従来よりも感染力が1.5倍ほど強い変異株が、検査したウイルスの中の7割を占めるような状況になってきています。その影響で流行が収まらずに、市中感染が広がっていくような状況に陥れば、集団接種会場に高齢者が大勢集まって接種を受けるのが安全かどうか、という問題が生じます。

■大規模接種会場のリスク

――政府は5月下旬、東京と大阪に、自衛隊の運営する大規模接種センターを設置し、接種スピードを上げていく予定とされています。

 効率よく接種するには、ある程度の人数を集めて行う集団接種会場での接種は欠かせませんが、高齢者の場合、大規模接種センターほどの規模の会場で接種するのが果たして効率的かどうか、私は懐疑的です。
 東京・大手町の大規模接種センターでは1日1万人に接種するそうです。1時間に1000人近くに接種する計算になります。

 ワクチンの接種前には、アレルギー歴や体調、現在服用している薬の種類などを聞く「予診」が必要になります。高齢者には、持病を複数持っている方もいますし、耳が遠い方や認知症の方もいますから、予診にはかなり、時間がかかります。

 また、接種後には、健康な方でも15分間、アレルギーの起きる可能性の高い方などは30分間、会場で健康観察をしてから、帰っていただきます。

 ですから、会場に来てさっと打ってさっと帰る、というわけにはいきません。このため、会場には常時1000人~2000人近い方が滞在していることになります。
 

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暑い中、電車にのって大手町まで…