現在、コロナ病棟は陽性患者用10床に9人、HCUは10床に4人が入院中です。第4波が本格化するにつれ、満床は時間の問題とみています。

 なぜ、五輪開催に反対するのか。「大阪では医療にかかれず亡くなる患者さんがいるのに、五輪をやるのか」という倫理的な話ではありません。五輪を行っても感染が広がらず、地域の医療にも影響しない。それが科学的に担保されるなら、文句を言う筋合いはない。ただ、そのために必要な具体的で緻密(ちみつ)な方策が国から全く示されず、国民の疑問にもまともに答えない。それなら反対せざるをえません。

 競泳の池江璃花子さん(20)が「辞退して」と求めるSNSの声に対して「苦しい」と。選手の方が五輪に向け努力を続けるのは当然。私は科学的な観点から、「中止を決めることができていない」国の責任だと考えます。

 今回の貼り紙は、立川市の皆さんに現状を知ってもらえたらという気持ちで行ったこと。話題になり、驚いています。でも逆に言うと、「やはりみんな、そう思っていたのかな」と。おそらく同じように思っておられる医療者の方も多いのでは。他の先生方にもぜひ声を上げていただけたらと思っています。

(編集部・小長光哲郎)

AERA 2021年5月24日号

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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