——同期には山田孝之、宮崎あおい、蒼井優と、錚々(そうそう)たる顔ぶれが並ぶ。売れない間、売れっ子の彼らや魅力あるアーティストたちを見続けた。

松本:私の友達はすぐにスターになったんです。スタートはみんなそれほど変わらないのに、私だけが売れなかった。何が違うんだろう? と思いましたが、違いは明白でした。演技力だったり人間力だったり。仕事がほとんどない間、ずっと彼らを見てきました。そのうち、演技がうまいことよりも人間性がいかに魅力的かが大切だと気づいたんです。人間力があればおのずと演技力もついてくる。人間としての中身がしっかりしているなら、演技はいかようにも自由にできる。そのほうがすごく自由ではないか。私は存在しているだけで説得力があるような俳優になりたかった。どうしたら自分に自信を持てるか、どんな人間になりたいかを学んできた20年だったと思います。

■心でつながりたい

——20年、友達と遊んでいても心から笑ったことがなかった。心には売れない自分をなんとかしなければという思いばかり。人間力を磨こうと25歳で一念発起して1年間英国へ留学したが、ただ真面目に勉強した。「未熟な私には遊ぶ資格がない」と自分を縛り付けていた。だから面白みのない人間になっていたと気がついたのは、帰国後しばらく経ってからだ。

松本:今ようやく自立できてきて、私は本当の意味でこれから笑ったり遊んだりしていくんだろうと思っています。旅行でも「楽しい」という感覚の中で見るものは、すごく美しいはず。真面目に生き過ぎると、感性が心に入る余裕がないんですよね。

 心の底から笑いたい。何か楽しいことをしたい、遊びたい。遊びこそ人生に豊かさをもたらしてくれるとすごく感じています。もっと人と心でつながりたいですし、コミュニケーションを取りたい。そういう気持ちになれた今は、私自身がすごく変わるときなのかもしれません。

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