だがいま、「メダカバブルが起きている」と戸松さんは苦言を呈する。メダカの販売には資格もいらないため、投機目的でメダカの飼育・販売を始める人も出てきた。転売目的でメダカを盗むことも考えられるという。

 弊害はまだある。

「特にネットオークションでは画像が加工され、落札した商品が届いてみると写真と全然違っていたということがあります」

 と言うのは、日本初のメダカ総合情報サイト「めだかやドットコム」を運営する青木崇浩さん(44)。メダカブームの牽引役だ。その青木さんによれば、メダカには黄・白・黒の3色素しかなく、3色をかけ合わせて色をつくる。だから「赤色」のメダカは絶対につくれない。

 それなのに、画面上で赤色に加工されたメダカがオークションに出されていることがあるという。「だまされた」と気づいて出品者に連絡しても、生き物という理由で返品を受け付けないとの報告もあるそうだ。

■買い手の知識は必須

 だまされないためにはどうすればいいのか。

 青木さんは、一義的には販売側の倫理の問題だが、買う側の知識も必要と説く。

「そんなに難しくはありません。赤色のメダカが存在しないこともそうですし、突然変異の親から生まれた卵から、親と同じ姿や形のメダカが生まれない、といったことです。新しいメダカは、わずかな変化への気づきと、交配の積み重ねでしかありません」

 メダカの魅力は、日本最小の淡水魚であるその小ささ、奥ゆかしい色合い、泳ぎ方、すべてにあると青木さん。価格ばかりが注目されるが、生き物を飼うには責任が伴うことを忘れてはいけないと、青木さんは語る。

「きちんとした知識を持って、楽しく飼育してほしい」

 たかがメダカ、されどメダカだ。(編集部・野村昌二)

AERA 2021年5月17日号

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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