——一方で、これまで改めて考えることのなかった、日本の撮影現場の良さに気づく貴重な機会にもなった。

小栗:莫大(ばくだい)な予算をかけず、桁が一つ違うような予算のなかでエンターテインメント作品をつくっている日本のスタッフは、それはそれですごいなと改めて感じましたね。同じくらいの予算があるとすれば、日本のスタッフならもっとすごい作品をつくることができるのではないか、と思うことすらあります。

 向こうでは、カメラのフォーカスが合っていないがために撮り直しをすることもよくありましたが、みな大して気にせず「あ、ごめん!」みたいな感じもあって。日本のスタッフさんたちの技術レベルは高く、みな優秀なんだな、と。

——作品が完成してからも、キャストやスタッフたちとはいい関係が続いている。

小栗:一昨年の3月にオーストラリアで撮影をしてから、昨年の1月にロサンゼルスでも撮影があって、そこでスタッフやキャストと喜びの再会を果たしました。当時、僕はロサンゼルスで暮らしていたので、みんな「英語がうまくなっている!」と。楽しかったですね。「以前はまわりで何を話してもシュンはわからないだろうと思っていたけれど、いまは内容を理解しているから気をつけなきゃ」なんて言われながら(笑)。共演シーンの多かったデミアン・ビチルやアレクサンダー・スカルスガルドとは、「なかなか会えないけれど、元気にしている?」なんていまも連絡を取り合っています。

 僕自身は、これからしばらくは撮影の関係で(来年の大河ドラマに主演するなど)、日本に留まるという選択をしました。でも、一段落して海外の作品に出る機会があるのなら、チャレンジしてみたいなという思いはもちろんあります。願っていればチャンスは訪れるでしょうし、そのチャンスをものにできるか否かは自分次第だったりもする。でも、その時の脚本に「サーモン」ってセリフがあったら「これはちょっと言えません」と最初に言っちゃうかな(笑)。

(ライター・古谷ゆう子)

AERA 2021年5月17日号