——現場では、撮影スタイルにも大きな違いを感じた。もっとも印象的だったのは、「時間の使い方」だった。

小栗:ワンシーンを撮るのに何日もかける、ということが頻繁(ひんぱん)にありました。すべての現場がそうだとは思いませんが、日本では効率を優先して、「この時間内に撮り切ろう」という進め方をすることがあるので、感覚がまったく違いました。通常、このくらいの尺のこのくらいのシーンだったら半日で撮り切ってしまうのではないか、と思うようなシーンに納得がいくまで丸2日かけることもある。そうした時間も予算もかけられる現場にいると、純粋に「いいな」と思います。丸2日かけても全部カットしてしまうこともありますし、予定通りに行くことはほとんどなかったです。

——土日にはしっかり休みを取り、プライベートの時間も大切にするスタッフたちの姿も印象的だったという。

小栗:みんな余裕がありますよね。時間的に追い詰められていないから、「寝ていない」という状況もほとんどないですし。撮影が早朝からスタートすれば夕方早い時間に終わりますし、深夜から始まれば朝には終わる。疲弊しながら現場にいる、という感じはなかったので、「職場」として健全だな、と。もちろん作品や現場によるのでしょうけれど、自分が見てきたなかでは、“ギスギスしている感じ”はなかった気がします。

■日本の現場の良さとは

小栗:1日だけ土曜日に撮影を行ったのですが、それは僕のスケジュールによるものだったので、「シュンのせいで、サタデーシュートになる」「忙しい日本人俳優みたいだから、早く帰さなければ」なんて話にもなっていました(笑)。

 日本の俳優たちのなかでは、「作品に入っている間はストイックに役のことだけを考える」のが美徳の一つとされているところがある。でも、向こうの現場では「普通の生活をする」ということにも重きを置いているように感じました。もちろんずっと役に入り込んでいる方もいるでしょうし、「ゴジラvsコング」はエンターテインメント作品だということも大きいと思いますが、楽しみながらものづくりをしている感じはいいな、と。

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