「つみたてNISAは世界経済の長期的な成長に乗って、安定的に資産を増やしていくものです。子どもが高校に入学したあたりで『あと3年で大学だ、しかも医学部!』などと慌てて始めても、大きく増やすことはできません。できれば子どもが生まれた直後から18年後を見越して、無理のない少額資金を積み立てに回すのが一番いい」

 つみたてNISAで選ぶのは「株式」に投資する投信。半分は現金として貯めているので、わざわざ債券型やバランス型を選ぶ必要はない。子どもが幼い頃はリスクを取って、米国のS&P500や新興国株式などミドルリスク・ミドルリターンなもので運用し、大学進学が近づいたら、より安定的な全世界株式や先進国株式に切り替える。

■投信切り替えは1回

「18年は長いです。今は米国の株式が最強の勢いですが、5年後、10年後には『いや、中国のほうがすごいでしょ』となっているかもしれません」

 といっても、こまめに投信を入れ替える必要はない。最初の10年と残りの8年で少し変えるだけ。横山さんのプランをもとに、18年間、月々2万円を貯蓄、同じく2万円をつみたてNISAで運用した場合をシミュレーション。

 当初10年は、米国株式に連動する投信に70%(1万4千円)、日本を除く全世界株式に20%(4千円)、新興国株式に10%(2千円)を投資して積極的に増やすことを狙う。

 後半の8年は、値動きを多少落ち着かせる。全世界株式に60%(1万2千円)、鉄板の先進国株式と米国株式に各20%(4千円)を振り分け、少しだけ安定運用に移行する。

 直近18年間の運用実績だと「年間24万円×18年間」の運用で、元本432万円が約2倍の816万円まで増加。貯金と合わせて1248万円だ。試算した18年の間には、世界的に株価が暴落した08年のリーマン・ショックの時期も含まれているが、積み立てだからこそこんなに増えたのである。

 時間を分散すると、値段が高い時期には少しずつしか買えず、安い時期にたくさんの量を買える。すると、その後の上昇時にしっかり利益が得られる。「ドルコスト平均法」と呼ばれる、投資の世界では基本の手法だ。

「この試算だと、運用で得た利益は384万円。通常の投資だとその約20%の78万円以上は税金で持っていかれる計算になりますが、税金が一切かからないつみたてNISAなら、まるまる384万円が教育資金に使えます。利益が非課税って、意外に大きいんですよ」

■途中でやめると損

 投信の積み立てをする上で、初心者が気をつけるべきことはあるのだろうか。マネックス証券マーケティング部の西尾貴仁さんに聞いた。

「ドルコスト平均法の効果を発揮するためには、積み立てをやめないことが肝心です。昨年3月のコロナ・ショックのような暴落で含み損が出ても『今、たくさん買えている』と落ち着いてください。最終的に基準価額が平均購買単価より上がれば資産は増えるわけですから、一時的な下落で投げ出すと、損をしたまま投資をやめてしまうことになりかねません」

 つみたてNISAは必ず20年間やらなければいけないわけではない。途中で資金が必要になったら、時価で自由に引き出せる。この特徴を利用して「投資した金額が2倍に増えたら、その半分を引き出して貯金に移していく」のも一考だ。(ジャーナリスト・向井翔太、編集部・中島晶子)

AERA 2021年5月17日号

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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