環境相 小泉進次郎(49) (c)朝日新聞社
環境相 小泉進次郎(49) (c)朝日新聞社
AERA 20201年5月17日号より
AERA 20201年5月17日号より

 遅々として進まぬワクチン接種だが、東京五輪・パラリンピックの日程だけは着実に近づく。総選挙をにらみ、菅首相が切れるカードは数少ない。AERA 2021年5月17日号の記事から。

【図】菅氏とポスト菅の発言は?

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 永田町は今、「オリンピック」と「ワクチン」に政局が翻弄(ほんろう)されている。3度目の緊急事態宣言の成果も乏しく、これまで何が何でも五輪・パラリンピックはやると明言してきた自民党内からも「この状況では難しいのではないか」という声が広がりつつある。特に菅首相の危機管理能力の欠如に対する不信は決定的だ。

 5月5日、記者団のぶら下がり取材に応じた菅首相は、4都府県に発令中の緊急事態宣言や、まん延防止等重点措置などの感染拡大防止策の成果を尋ねられ、こう回答した。

「人流については間違いなく減少した。効果が出始めている」

 そして、続けて感染者数の増加について記者に水を向けられると少し不機嫌にこう返した。

「今日の数字を皆さんご承知だと思いますけれど、感染者の人口が減少している。そうした効果は出始めてきているのではないかと思っています」

 これらを聞いたある自民党幹部は正直、驚いたと語る。

「人流についても、今日の数字についても、いつと比べてという根拠を全く語っていない。事務方から上がってきた資料の都合のいい数字しか念頭にないのだろう」

■五輪中止ならW選挙

 このまま緊急事態宣言を解除できず、5月中旬を過ぎても全国的に感染者数が減少しなければ「東京五輪・パラリンピック中止」が現実味を帯びてくる。求心力を失った菅政権は解散総選挙に踏み切るしかなくなる。最短で7月4日投開票の東京都議選に合わせたダブル選挙が有力視されている。この場合、東京五輪・パラリンピックという最強カードを失った政権が掲げる「旗」が問題だ。解散の名目としては菅政権のコロナ対策を世に問う「コロナ救国」解散だ。菅首相に近い自民党議員は不安しかないと訴える。

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