推定体重を出そうとすると、一人目はすでに頭が産道近くに降りているため計測できず、二人目は1400gと言われました。夫はもう病院のすぐ近くまで来ていましたが、これ以上は危険とのことで、会えないままオペ室へ向かいました。
■ここを出る時にはパパとママに
オペ室の中では誰もが慌ただしく動いていました。
麻酔が効いて帝王切開が始まる直前、スタッフのひとりが私のところに来て、夫と母と義母が手術待合室に到着したと教えてくれました。
「パパもおばあちゃんたちも外で待っているからね。ママ、頑張ろうね」
……そうか、ここを出る時にはもう、ゆうくんはパパで私はママなんだ。しかもゆうくん、出産でも無理と言っていたのに、来れたし(笑)。
思わず笑いそうになりましたが、オペ室の張りつめた空気から、笑顔を飲み込んでしまいました。
「ずいぶん降りちゃってるなぁ。足の間に何か挟まっているような感じする? もし、押されるような感覚があったらすぐに教えてね。とにかく急ごう」
わずか数分で長女が生まれました。その瞬間、「にゃあ~」と一言だけ聞こえましたが、すぐに泣き声が消えました。
■「今は対面する余裕がない」
「もうひとり出るよ」
生まれたはずなのに、声がしませんでした。
状況を教えてほしくて周囲を見渡しましたが、産科のドクターも助産師さんも顔が真剣で、全員の視線が次女だけに向けられていて、話しかけられる雰囲気ではありませんでした。
「二人とも女の子だよ。妹さんが苦しそうで、今は対面する余裕がなくてね。たぶん1400も無いと思うから、帝王切開で良かったよ。お姉ちゃんより先にオペ室から出して、このままNICUでお預かりしますね」
「お父さん呼んで!」「エレベーター止めてって伝えて」
遠くでは大勢の大人の声が響いていましたが、子どもたちの声は全く聞こえませんでした。
赤ちゃんはどうなってしまうのだろう。
ドラマで見たことのあるシーンでした。