「インクルーシブ」「インクルージョン」という言葉を知っていますか? 障害や多様性を排除するのではなく、「共生していく」という意味です。自身も障害を持つ子どもを持ち、滞在先のハワイでインクルーシブ教育に出会った江利川ちひろさんが、インクルーシブ教育の大切さや日本での課題を伝えます。
■初めて知った早産のリスク
早産は、子どもが小さく生まれるということだけでなく、子どもに病気や障害があらわれるリスクがあるということを、知らない人は少なからずいると思います。私もその一人でした。
我が家の双子の娘の出産予定日は2006年8月でしたが、大幅に早まり、5月に生まれてきました。早産の影響で、長女は寝たきりの生活を送ることになり、その後の私と夫の人生は大きく変わりました。今回は今年で15歳となる娘たちが、妊娠八カ月で生まれた時の話です。
5月は双子の娘の誕生月です。
2006年のその日、早朝に夫と過去最大級のけんかをしました。私は切迫早産で入院中で、午後から院内で行われる両親学級に夫とともに参加予定でしたが、夫の会社でアクシデントが起き、行かれなくなったと言われたのです。この病院では両親学級を受講しないと、立ち会い出産ができないという決まりがありました。
私「参加しないと立ち会えないって何度も言ったよね?」
夫「わざとじゃないし、今日はたとえ出産でも行かれない」
■陣痛が始まる
電話を切ってからも私のイライラは治まらず。
後から思えば、この時すでにおなかの痛みはあったのですが、怒りのピークと重なり、大して気にはなりませんでした。けれども、その数時間後の診察で、子宮口が3.5cmも開いているとわかったのです。
「うーん、とにかくゆっくりしてね。このままだとすぐに生まれちゃうよ。最低でも30週末を目標にしよう」
おなかの張りと赤ちゃんの状態を調べるために、分娩監視装置をつけました。しばらくすると頻繁におなかや腰が痛むことに気付き、ナースコールをするべきか迷っていると、助産師さんが来ました。