日本ハムで二刀流として活躍したが、米国では成功に懐疑的な見方が多かった。成功例がなかったので無理もないだろう。

 大谷は自らの力で信頼を勝ち取る。大リーグ1年目の2018年に大リーグ史上初の「10登板、20本塁打、10盗塁」を達成。日本人選手ではイチロー以来17年ぶりのア・リーグ新人王に選ばれた。

 ただ、その後のシーズンは二刀流に否定的な声が高まる。18年10月に右肘(ひじ)のトミー・ジョン手術(靱帯(じんたい)再建術)を受け、19年は1軍登板なし。打者に専念し、打率2割8分6厘、18本塁打、62打点、12盗塁の成績だった。

 コロナ禍で60試合制となった昨年はさらなる試練を迎える。18年9月2日以来693日ぶりの復帰登板だった7月26日のアスレチックス戦で、一回途中1死も取れずに3安打3四球5失点で降板。8月2日のアストロズ戦は二回途中から直球の球速が140キロ台に低下し、2回持たずに5四球2失点でマウンドを降りた。その後にMRI検査を受け、「右屈曲回内筋群の損傷」と診断されたため、登板は2試合に終わった。

■太い下半身に驚きの声

 19年9月に左膝蓋骨(しつがいこつ)の手術を受けた影響で、下半身が万全でないことも打撃に影響した。軸足の左足でタメが作れず直球に差し込まれ、変化球に泳がされる。打率1割9分、7本塁打、24打点。ミスショットが目立った。

「打者に専念すべきだ」という声が高まった。だが、大谷は信念を貫いた。今年2月の春季キャンプ。大谷の姿に日米のメディアから驚きの声が上がった。

「下半身が太くなり、他の選手と比べても体の厚みが目立つほどでした。その前の年は手術した影響もあって足が細く見えたので、別人のようでしたね。昨年は左足のリハビリも並行して行わなければいけなかったので、打撃フォームの改造に踏み切れませんでしたけど、オフ期間に軸足の左足に体重を残して下半身主導の打撃を徹底したことで力強いスイングができるようになりました。昨年は直球に対して伸び上がったような打ち方で力が伝わっていない打球が多かったのですが、今年は右中間、右翼方向へグングン伸びる打球が目立つのが進化の証しだと思います」(スポーツ紙大リーグ担当記者)

次のページ
1試合2盗塁の俊足