「あまりに不当な料金で配達員の生活を破壊している。直ちに中止すべきだ」

 声明を出したのはウーバーの配達員ら約30人でつくる労働組合「ウーバーイーツユニオン」。3月1日から福岡市と京都市で導入された新料金体系への抗議声明だった。新体系になると配達員の報酬が平均3割減り、ウーバーに問い合わせても明快な仕組みは説明されない。ユニオンは、配達員への公式な説明と減額分の補填(ほてん)などをウーバーに求めた。

 同ユニオン執行委員長の土屋俊明さん(44)によれば、その後、報酬は再び上がったという。ウーバーイーツ日本法人は本誌取材に、新料金体系の導入は行ったがユニオンが主張するような「事実はない」と回答。ただ土屋さんは、状況は悪化していくだろうと見る。

「世界的に見て多くのデリバリー業界は、サービス開始当初の報酬がもっとも高く、そこから落ちていくビジネスモデルと言われています。まず目の前にニンジンをぶら下げ、少しずつ報酬を下げ、最後はニンジンがなくなっても気づかずに走らせる。働き手がいなくなると、『損切り』してその国から撤退する。すでに韓国のウーバーイーツは、競争が激しく不採算が続いたため撤退しました」

(編集部・野村昌二)

※「後編」の「ウーバー配達中の事故がきっかけで労働組合委員長に 当時「人間扱いされていない」と感じた理由」に続く

AERA 2021年5月3日-5月10日合併号より抜粋

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野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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