――読書体験はいまの人生にどう影響していますか。

 本を読むということは、いろいろな人の人生を疑似体験するということ。人間を完全に理解するのは難しいけれど、他者に対しての理解を深めることはできる。たとえば、殺人事件のニュースを耳にしたときに、絶対に許されない行為ではあるけれど、「容疑者だけが悪いのか、社会のせいではないか」と考えられるようになる。そうした意味では、本を読むと人に優しくなれると思う。人の心に少し寄り添えるようになる。その優しさが“流される優しさ”ではなくて“芯のある優しさ”になってくるから、そんなふうに他者を思っていると、結果的に自分にも優しさが返ってくる。そう思っています。

プロフィル★加藤シゲアキ
1987年生まれ、大阪府出身。青山学院大学法学部卒。NEWSのメンバーとして活動しながら、2012年1月に『ピンクとグレー』で作家デビュー。20年に初のエッセー集『できることならスティードで』を刊行。21年に『オルタネート』で吉川英治文学新人賞受賞

(ライター・古谷ゆう子)

※月刊ジュニアエラ 2021年5月号より

ジュニアエラ 2021年 05 月号 [雑誌]

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古谷ゆう子
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