「過去10年間つみたてた場合」ではなく「過去31年のデータからつみたて10年分の平均値をとった」点がプロの分析だ。

「31年間の実績からは米国だけに集中投資していたほうがよかったという結論です。『月1万円×10年』のつみたてなら、米国に中国や欧州などを交ぜたときよりもプラス23万円となりました。期間15年で31万円、20年で71万円です」
 
 リスクについても分析してもらった。S&P500の場合、2008年に勃発した米国発の金融危機、リーマン・ショックを挟んだ時期は、株価が大暴落したこともあってパフォーマンスが悪化した。

 そのため2008年を含む15年間、つみたて投資をして元本120万円を割り込む確率はS&P500が12%、全世界株式は7%。米国株のほうがハイリスクということもできる。

「リーマン・ショックのような経済危機を挟むと、下がっている時期は安くたくさん買えるので、その後に上昇すれば利益は大きくなります。ただし『上昇すれば』の話ですので、リスクは大きいというわけです。

 米国株は何度も暴落しながら立ち直っていますのでパフォーマンスがいい。でも、リスク面で見れば全世界株式のほうが穏やかという結果ですね」
 
 全世界株式のデメリットはないのだろうか。

「新興国、中でも中国株の割合が高めなので、米中対立で中国経済が悪化するリスクが懸念されています。

 その点、S&P500に採用されている米国企業は、選別基準も厳しく、米国だけでなく世界で稼いでいるので、経済悪化のリスクは新興国より低いです」
 
 企業が成長すれば株価は上がる。つまり利益重視の資産運用ならS&P500、新興国のリスクを少し取りながらも全体のリスクは米国一辺倒より抑え、これからの20年でアジアが伸びる恩恵も受けたいなら全世界株式だ。

■全世界株式を推す億り人も

 個人投資家として米国の高配当株ETF(上場投信)などを買い、資産1億円を達成した橘(たちばな)ハルさんにも意見を聞いた。

 30代、3人家族にして、配当金などが年間生活費を上回る水準になっているハルさんは「S&P500より全世界株式を選ぶ」という。

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中国の勢いが増せば…