また、鬼滅は字幕版のほか、英語版、中国本土版、台湾版、インドネシア版といった吹替え版も配信・放送されており、各国での反響もニュース媒体を通じて日本に届きました。

 そこでも、台湾で鬼滅の人気に火が付いたのはアニメ第19話であったことや、中国の動画配信サイト「bilibili」でのアニメ再生回数が2020年8月時点で4.9億を突破したことが紹介されており、各国でも日本と同様に、アニメをきっかけに鬼滅の人気が高まっていることが窺えます。

 加えて作品関連のイベントではありませんが、主人公・竈門炭治郎を演じる花江夏樹氏が出演した「世界声優サミット」では、インドネシアでの鬼滅の人気、及びそれに伴う同国での花江氏の人気についても紹介されていました。

 こうした世界的な盛り上がりも受けてか、鬼滅に関しては、従来のような海外のアニメファンのみに向けたプロモーションだけでなく、“日本も含めた”世界のアニメファンに発信する企画が多数実施されているのも特徴的です。

 新型コロナウィルスの影響で中止となった北米最大級のアニメコンベンション「Anime Expo 2020」の代替イベントにあたる「Aniplex Online Fest」では、花江夏樹氏と下野紘氏をゲストに迎えた作品パネルが、リージョンブロックなく、日本も含めた世界各国から視聴可能な形で配信されました。

 また2020年10月の劇場版公開を記念して、YouTubeのAniplexUSチャンネルでは、花江夏樹氏に加え、英語版と中国本土版で竈門炭治郎役を演じるZach Aguilar氏とChao Xing氏を交えた日中英キャストが勢揃いする動画が配信されています。

 近年、配信サービスの普及によって日本のアニメが世界各国で時差なく視聴できるようになったと同時に、日本のアニメファンの中でも、海外での日本アニメの展開――海外ファンの反応、吹替キャストや現地限定グッズ、コラボやイベント等――への興味が高まり、SNSを通じての現地ファン達との交流も活発になってきました。こうした背景もあってか、上記の様々な試みは、世界各国の作品ファンだけでなく、日本のファンからも多くの興味関心を集めているようです。

 まだまだ日本以外の国では、日本アニメは“ニッチなアニメファンの中でもさらにニッチな日本のアニメファン”に市場が限られることも多く、鬼滅の盛り上がりも、日本のように、老若男女問わず多くの人が知っている国民的なヒット、とまではなかなかいきません。しかし上記の通り、現地にいる日本アニメのファンの間で、鬼滅は着実に人気を高めており、アニメをきっかけに各国では様々な盛り上がりも見せています。

 10月に日本で公開された劇場版への注目度もかなり高く、また本劇場版の興行に関しては、各国のアニメファンのみならず、別の角度からも注目が集まっているようです。

※小新井涼「鬼滅フィーバーはなぜ起こったか? データで読み解くヒットの理由」から抜粋