──レコーディングは年始に行われた。年末の舞台で喉を壊した後だったが、無事に11曲を5日間で録り終えた。

浦井:レコーディングをきっかけに、テノールからバリトン発声をゼロから学びました。それからミュージカル「ゴースト」に挑みましたが、この学びを取り入れて自分を活性化し、バリトン発声を確立することができたんです。今年40歳になりますが、40代、50代となって役が変化していく中で、役に応じて説得力のある声を作るという目標のきっかけになりました。

■発声そのものを変える

浦井:今後テノールだけではなく、ハイバリトンからバスまで出せるようにしたい。テノール発声よりも深いところから発声できるようになったら喉を壊さないのではないかという思いもあり、今は体全体で歌うということを毎日レッスンしています。体の仕組みを変えて、発声の領域を変えると同時に、発声自体を変えることを目指しています。

──この20年、先輩たちの姿を見ながら、努力の大切さ、自分への厳しさ、失うものの大きさを知ったと言う。厳しい世界の中で生き抜いてきた彼らの顔に刻まれたシワも、彼らが抱えてきただろう重荷も、疲れた姿さえもカッコいいと感じてきた。

浦井:「それだけ生きてきたのでしょう?」と感じてしまうから。コロナ禍であっても諦めてはいけない、自分にできることを広げていけばもっとすごいことができるのではないか、と思わせてくれるのは、先輩たちの笑顔があるから。同世代が繋がってチームワークでお客様を楽しませようというのも、諸先輩を見習っている世代だからだと思います。後輩たちへのアドバイスも、先輩たちから託されたタスキの一つかなと思っています。

 20日のコンサートはアルバムの楽曲を含めたミュージカル曲を中心に、楽しいものにしていけたらと思います。昼公演のゲストに井上芳雄さん、夜公演では平方元基さんが来てくださいます。二人との掛け合いも楽しみにしていただきたいです。

(フリーランス記者・坂口さゆり)

AERA 2021年4月26日号