育った環境、金銭トラブルにとどまらないバッシング報道など、彼の大変さは理解するが、それにしても現在の皇位継承順位では、将来「天皇の義兄」になる可能性がある。「私人とばかりは言えない立場で、それを思えばもっと別な書き方があったと思います」

 対極として河西さんがあげたのが、上皇后美智子さまの言葉だ。平成への代替わり後に相次いだバッシング報道についての見解で、93年の誕生日にあたり、宮内記者会へ回答したものだ。

<どのような批判も、自分を省みるよすがとして耳を傾けねばと思います。今までに私の配慮が充分でなかったり、どのようなことでも、私の言葉が人を傷つけておりましたら、許して頂きたいと思います。しかし事実でない報道には、大きな悲しみと戸惑いを覚えます。批判の許されない社会であってはなりませんが、事実に基づかない批判が、繰り返し許される社会であって欲しくはありません>

「美智子さんは皇族とは『見られる存在』だということを熟知していました。自分を反省する言葉から入り、主張すべきは主張する。見事です」

 この言葉が発表された日に美智子さまは倒れ、言葉を失う。それをきっかけにバッシングはやんでいった。「小室さんも文書次第で、一気に雰囲気を変えることもできたと思うのですが、火に油をそそいでしまいましたね」と河西さん。

 文書が公表された翌日、眞子さまは宮内庁を通じ、「いろいろな経緯があったことを理解してくださる方がいらっしゃればありがたい」とコメントした。

眞子さんと小室さんはとてもよく似ていると思います」と河西さん。2人はどこへ向かうのだろう。(コラムニスト・矢部万紀子

AERA 2021年4月26日号より抜粋

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矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

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