「米国の作戦で開発されたメッセンジャーRNAワクチンは、今まで人類が使ったことがないタイプ。長年研究してきたメーカーが早く実用化したいと願っていたところに、FDAから新型コロナの特例として認可のお墨付きを得ることができ、渡りに船の面もあったと思います」

 日本の第4波で死亡者を増やさないためには、高齢者を中心にワクチン接種を進めるしかない、と古閑さんは訴える。

 一方、みずほリサーチ&テクノロジーズの上席主任エコノミスト・服部直樹さんは、早期収束には「高齢者と現役世代の並行接種」の検討も必要という。

「AIを使ったシミュレーションの結果、行動が活発な現役世代にワクチンを打たないと感染は抑えられないことが政府に報告されています。この結果を踏まえると、現役世代に早くワクチンを届けないと感染収束が長引いてしまいます」

 服部さんは、高齢者の接種が完了するまで現役世代は打てない、といった杓子定規な対応ではなく、例えば高齢者の50%の接種が終わり、医療体制が落ち着いた段階で高齢者と現役世代を並行して接種していくのがいいのでは、と提案する。そして、こんな目安も示す。

「日本の場合、欧米などに比べると相対的に感染者数が増えにくいことから、接種目標の7割よりも少ない水準で集団免疫を獲得できる可能性もあります」

 来年の春を迎える頃には、長いトンネルから抜け出せるかもしれない。今の段階で気を緩めるのはもってのほかだ。(編集部・渡辺豪)

AERA 2021年4月26日号より抜粋

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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