良郎さんは当時、「競技人口の少ない女子ゴルフならプロになれる」と狙いを定め、3人の娘に毎日5千円を手渡し、練習場に通わせた。

「うちは貧乏でしたから、娘たちからも『毎日5千円なんてもったいない』と言われたけど、『これは投資だから』と払い続けた。あえてお金をかけて、ゴルフを投げ出せない状況を作ったんです。結果的には十分すぎるリターンがありました」

■お金より親のサポート

 では、松山のような選手を育てるために最も必要なものは?

「お金も大事ですが、一番は親のサポートですね。地方移住も含め、どうやって練習環境を整えるか。そして、子どもの『うまくなりたい』という気持ちを持続させてあげること。松山君も石川遼君(29)も、トップ選手はとにかくゴルフが好きなんですよ。休みの日も練習場に行っちゃうくらいですからね(笑)。そういう向上心は、小さい頃にゴルフとどう向き合うかで決まってきます」

 マスターズ優勝後、公式会見に臨んだ松山はこう語った。

「(日本で)今テレビを見ている子どもたちが5年後、10年後にこの舞台に立って、その子たちとトップで争うことができたらすごく幸せ」

 今回の優勝賞金207万ドル(約2億2700万円)を合わせ、松山の生涯獲得賞金は約36億5千万円。“第2の松山”を育てるために必要なもの。それは相応のお金と揺るぎない「覚悟」だ。(編集部・藤井直樹)

AERA 2021年4月26日号