横山光昭(よこやま・みつあき)/マイエフピー代表、ファイナンシャルプランナー。著書『はじめての人のための3000円投資生活』はシリーズ累計85万部(撮影/小山幸佑)
横山光昭(よこやま・みつあき)/マイエフピー代表、ファイナンシャルプランナー。著書『はじめての人のための3000円投資生活』はシリーズ累計85万部(撮影/小山幸佑)
相場は毎年のように変わるので、好調な年と不調な年がある。2020年の1年間では新興国株ファンドが好調で、日本債券ファンドが不調だったが、2021年以降はどうなるか分からない 
相場は毎年のように変わるので、好調な年と不調な年がある。2020年の1年間では新興国株ファンドが好調で、日本債券ファンドが不調だったが、2021年以降はどうなるか分からない 

 コロナ禍で「つみたてNISA」の口座開設数が急増している。4月13日発売の「AERA Money2021春号」では、これからつみたてNISAをはじめる人のために「仕組みと活用法」をまとめている。


 
「つみたてNISA」の管轄である金融庁によると、2020年末の口座数は300万口座を突破。1年間で1.6倍まで急増し、買い付け総額も6878億円超と前年の2.3倍まで増えた。世の中では静々と、つみたてNISAブームが起こっていたのである。

 つみたてNISAって何?という初心者のために解説しておこう。そもそもNISAとは「Nippon Individual Savings Account=日本の個人貯蓄口座」の頭文字をとったもの。

「貯蓄」といっても、実際は投資。投資信託(以下、投信)などを買って得た利益に税金がかからない、お得な非課税投資制度だ。
 
 投信や株式を買った価格より高く売ることで得られる「値上がり益」や、毎年の収益から投資家に還元される「配当金」「分配金」には通常、税金がかかる。

 その税率は、所得税と住民税に復興特別所得税を加えた20.315%。この約20%の税金が一切かからないことがNISAの一番のメリットだ。

 NISAには、一般NISAとつみたてNISAの2種類がある。それぞれ毎年投資できる金額や、利益が非課税になる期間が決められている。

 つみたてNISAの場合、年間40万円までの投資金額に対して最長20年間、税金がかからない。同じ金額を毎月つみたてるとしたら、月間つみたて額は約3万3000円になる。
 
 投資対象は、金融庁の認めた、販売手数料が無料で運用コストの安い投信とETF(上場投信)だけ、というのもつみたてNISAの大きな特徴だ。

「いや、自分はNISAで個別企業の株を買いたい」という人は、つみたてNISAではなく、毎年120万円まで最長5年間は税金のかからない一般NISAを選択する必要がある。
 
 これまで著書などを通じてつみたて投資を勧めてきたファイナンシャルプランナーの横山光昭さんは、つみたてNISAを勧める。

「最長20年という時間を味方につけて、資産を大きく増やせるのが、つみたてNISAの優れた点です。

 プロに運用をお任せする投信に、毎月、少額からつみたてられますから、ビギナーも簡単にはじめられます。ほったらかしにしていることが逆に資産形成につながる面もあるので、投資しているのを忘れるくらいがちょうどいいかもしれません。

 ただし、運用はプロにお任せでも、最初に『じゃあ、具体的にどの投信を買おうか?』についてだけは自分で選ぶ必要があります」
 
 実際、つみたてNISAの対象となる投信の運用成績は千差万別。初心者が数多くの投信の中から10年、20年とつみたて投資を続ける「よき伴侶」を選ぶのは難しい。
 
 2020年1月からの1年間だけで見てみよう。つみたてNISAでつみたてられる投信の中で運用成績が一番よかったのは、「三井住友・DC新興国株式インデックスファンド」。投信の値段に相当する「基準価額」は1年で約10%、上昇した。

 一方、この期間に最も成績が悪かったのは日本の債券をメインに投資するバランス型のインデックス型投信。たまたま、この1年は、中国や台湾、韓国など新興国の株式で運用する投信の成績がよく、国債など日本の債券を投資対象にした国内債券型投信の成績が悪かったわけだ。

「つみたてNISAの投資先選びで注意したいのは『株は怖い、危ない』と必要以上に恐れて、債券型投信を選んでしまうことです。

 中でも国内債券の投信は銀行に定期預金しているのと実質的にはほとんど変わらない運用方法。運用の手数料分、負けてしまうことにもなりえます」
 
 年間40万円に設定されたつみたてNISAの貴重な非課税投資枠をわざわざ使って投資するのはもったいない、ということだ。

「つみたて投資をしようと思う人で、貯金がゼロという人は少ないでしょう。貯金の形で安全資金はある程度持っているわけですから、つみたてNISAではリスクを取りながら高い運用成績を非課税で狙える投信を選ぶのがいいと思います。一番のおすすめは外国の『株式』の投信です」
 
 年間で40万円までしかつみたてられないものの、最長20年間運用を続ければ、総額では最大800万円もの資金を非課税で運用できる。この非課税枠をどれだけ活用できるかが成功の秘訣だ。
 
 余談だが、年間40万円だときっちり12(カ月)で割り切れない。これは金融庁がボーナス併用も考慮に入れて決めたのだろうか……。きっちり非課税枠を使い切りたい人は、金融機関であらかじめ増額月を指定しておこう。

――続きはアエラ増刊『AERA Money 2021春号』ー

(取材・文/安住拓哉、編集部・中島晶子、伊藤忍)

【グラフ】コロナ禍の1年でトップの投信、ワーストの投信は?

著者プロフィールを見る
中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

中島晶子の記事一覧はこちら