これが、不安の正体です。

 ですから、もし不安な気持ちが生じたら、自分の心が弱いのではなく、「心理学的ホメオスタシスが働いている」と考えるべきです。

 このように、まずは不安の正体を知っておくことはとても大事です。

 もしあなたが不安を消そうとしたらどうなるでしょう? 脳は「まずい! 気づかれていないのかも」と、どんどん不安を増長させてしまいます。

 つまりまず第一にやるべきは「今自分は不安に思っている」と認めること。そして「不安に思ってもOK」と思うことですね。これまで説明してきたように、不安になるのは脳からの警告。ですから不安を敵視するのではなく、「不安はあるよ、認識しているよ」と脳に伝えるのがいい。そうすると不安はそれ以上大きくなりません。これは、「自己受容」というのですが、どんなときでもありのままの自分を認める、つまり「自己受容」できる人というのは幸せに生きることができます。

■不安を紙に書き出す

 不安を消したい、もしくはすぐに不安になってしまう自分を直したい、と思うのではなく、「不安はあってOK、不安になってしまう自分もOK」と思う。これが不安対処法の第1段階です。具体的には「大丈夫、大丈夫」と自分に声をかける、「ま、いっか」と、自分に言ってみるなどですね。脳は言葉に影響されますから、とりあえずポジティブな言葉に変換してみるのも手です。

 次に、何に対して不安に思っているかを明確にしていきます。「何かわからないけれど、漠然とした不安がある」では、対処することができません。

 例えば、今自分が子どもに感じている不安を紙に書き出してみます。

 子どもがクラスになじめるかどうかが不安なのか、このコロナ禍の中できちんと授業ができるかどうかが不安なのか、子どもが勉強についていけるかどうかが不安なのか。

 頭の中でぼんやり考えているだけでは絶対に解決しません。紙に書き出すことで、不安が「見える化」され、物質化されます。それによって、頭の中でぐるぐるリピートしてしまうことがなくなるんですね。きちんとした文章になっていなくてもいいんです。とりあえず今の心の内をメモしてみる気持ちで書いてみます。やってみると、頭の中が整理されて視界が開けてくるはずです。

 最後にやりたいのは「課題の分離」です。先ほど書き出した不安の内容を自分でコントロールできるものとできないものの二つに分けます。

 そして、自分のコントロールできるものだけに集中し、できないものは無視します。

 たとえば、「コロナ禍できちんと授業ができるかどうか」が不安であったとしたら、コロナの状況を自分が止めることはできない。だったらそれは考えず、子どもが帰ってきたら授業の様子を少し丁寧に聞いてみる、授業の内容が足りないようなら学校外で勉強する場を見つけてみる、など自分がコントロールできるものに思考を集中させる。これが正しい対処法です。

(構成/AERA with Kids前編集長・江口祐子)

AERA 2021年4月19日号より抜粋

科学的にイライラ怒りを手放す 神子育て

星渉

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