■台湾有事の連携を議論

──日本にとって「尖閣」、米国にとって「台湾」。こうした地域で有事勃発という世論が米国内にはあると聞きます。

まず、台湾にしても、尖閣にしても、今の中国からすれば絶対に譲ることはできない問題となっています。

最近、気になるのは米国で数年以内に台湾有事が勃発するという言説がまことしやかに流れ、高まっている点です。同盟重視、日本の地政学的な位置などを考えると、台湾有事に備えて、日米はどのように連携し対応するのか。私は台湾有事は近いうちは「ない」と思いますが、いずれにしても、そうした議論はすでに始まっていると思います。

先日の日米の外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)では「台湾海峡の平和と安定の重要性を確認した」と、あえて「台湾海峡」という言葉を明示した上で、この会議の成果を文書で発表しました。中国の報道官は、厳しい言葉でこれを非難しています。4月5日の日中外相電話会談でもおそらく中国から釘を刺されたのではないでしょうか。日中関係は難しい段階に入っていると思います。

──米国も中国自身も「中国を過大評価」していると指摘されていますね。

はい。経済規模で中国が米国を抜いて世界第1位になる、という言説は、確かに中国全体のGDPを基準に計算すれば間違いではありません。しかし、これを国民1人当たりに換算するとどうでしょう。中国はとても米国には勝てません。

 米国は旧ソ連との冷戦時代からの伝統で、敵国を過大評価する傾向があり、当の中国は今、過剰な自信を持ってしまっている。けれども、中国は足元の「格差」や「教育」などの問題を解決しない限り、国内的にも非常に不安定な状態が続きます。日本もただ米国と行動を共にするだけではなく、こうした状況を冷静に見極めて、協力できる部分は協力する姿勢を貫く必要があると思います。

(構成/編集部・中原一歩)

AERA 2021年4月19日号