青山瑠妙(あおやま・るみ)/早稲田大学教授・同大学現代中国研究所所長。米スタンフォード大客員研究員を経て現職。専門は現代中国外交。著書に『中国のアジア外交』など (c)朝日新聞社
青山瑠妙(あおやま・るみ)/早稲田大学教授・同大学現代中国研究所所長。米スタンフォード大客員研究員を経て現職。専門は現代中国外交。著書に『中国のアジア外交』など (c)朝日新聞社

 バイデン新政権の誕生は、日米中の関係性にどう影響してくるのか。AERA 2021年4月19日号で、早稲田大学教授・同大学現代中国研究所所長の青山瑠妙(るみ)さんに話を聞いた。

【「くそったれショー」と酷評された米大統領候補の討論会】

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──バイデン政権で米中関係はどう変わるのでしょうか。

3月18日、米中首脳会談に先立ち、ブリンケン米国務長官と楊潔チー(ヤンチェチー)・中国共産党政治局員の会談が行われました。バイデン政権誕生後、米中外交トップによる初協議だったのですが、冒頭から激しい非難の応酬となりました。結局、両者の非難合戦は報道陣を前に1時間も続きました。さすがに協議後は、双方とも抑制的な態度に転じました。しかし、外交儀礼の常識から考えても新政権誕生後、初めての国家間の会談で、両国がこのような非難の応酬に終始するのは極めて異例のことです。まさに米中の今後の4年間を暗示させるものでした。

──日米首脳会談を経て、日本は中国に対してどのような外交を強いられるでしょうか?

ここ数年、日米同盟は「より平等」な関係に深化していると思います。かつてのように米国が日本に無理な注文をつけ、それをいったん日本側が持ち帰って協議し、改めて米国と交渉するという関係性ではなく、むしろ日本は、米国と政策面で一致し、自ら意思を持って同じ方向を向いて動こうとしています。

ただ対中政策に関して、トランプ前政権は極めて恣意的な外交を展開しました。これがバイデン政権になると、より日米同盟を重視したものになるのは間違いありません。アジアであれば米国、日本、韓国の同盟を強化することで中国の覇権主義に強硬な姿勢をとる。中国側からしてみればバイデン政権はやりにくい相手になるでしょう。

米国内では中国国内の人権問題への懸念から、2022年の北京冬季五輪のボイコット論もくすぶっています。米オリンピック委員会がすでに反対の姿勢を示していますので、北京五輪のボイコットは現実となる可能性は低いでしょう。しかし日本は中国の人権問題で明確な態度を示す決断を迫られる可能性があります。

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