菅野智之は、日本プロ野球史上最高年俸の8億円で単年契約を結んだ(その後、田中将大が9億円で更新)。「プレッシャーはあるし、見合った活躍をしないといけない」などと語った(金額は推定) (c)朝日新聞社
菅野智之は、日本プロ野球史上最高年俸の8億円で単年契約を結んだ(その後、田中将大が9億円で更新)。「プレッシャーはあるし、見合った活躍をしないといけない」などと語った(金額は推定) (c)朝日新聞社

 今シーズン、大リーグへの移籍をいったん断念した菅野智之選手と球界の強打者との対決に注目が集まる。AERA 2021年4月19日号から。

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 セ・リーグで見逃せないのは、ポスティングシステムによる今季の大リーグ移籍を断念した巨人・菅野智之(31)だ。

 昨年はプロ野球新記録の開幕13連勝を飾るなど14勝2敗、防御率1.97。最多勝、最高勝率(8割7分5厘)、リーグ最優秀選手(MVP)に輝いた。今季は開幕戦だった3月26日のDeNA戦に先発した後の30日、脚部の違和感のため出場選手登録を抹消されたが、症状は重くないという。

 菅野も苦手にしている打者は少ない。昨年は中日・大島洋平(35)を10打数0安打、中日・高橋周平(27)、DeNA・宮崎敏郎(32)ともに6打数0安打とヒットメーカーを封じ込んでいる。18、19年は打ち込まれたDeNA・ソト(32)に対しても、昨季は11打数0安打、6三振。ヤクルトの4番・村上が11打数1安打、打率9分1厘、0本塁打、阪神の4番・大山悠輔(26)も13打数1安打、打率7分7厘、0本塁打と圧倒している。

■打ち崩すのは至難の業

 他球団の首脳陣はこう話す。

「直球、変化球の質が超一級品で、投げミスがほとんどない。打者からすれば打てる球が一球もない打席が多い。調子が悪いなりに抑える術を知っているので打ち崩すのは至難の業です」

 そんな菅野の天敵が、昨季打率3割2分8厘で首位打者を獲得したDeNA・佐野恵太(26)だ。昨季の対戦成績は8打数4安打、打率5割、1本塁打。通算でも14打数6安打、打率4割2分9厘だ(昨季時点)。広角に打ち分ける打撃技術に加え、ツボに入れば一発を放つパンチ力がある。菅野は修正能力が高い。対戦3年目でソトを抑えたように、佐野にどう対応するか。

 優勝争いが予想される阪神の1番・近本光司(26)も警戒しなければいけない。昨季は2打席連続アーチを浴びるなど、菅野に対して16打数7安打、打率4割3分8厘、2本塁打。菅野は昨季、阪神戦4勝1敗、防御率2.25とカード別で最も白星を稼いだ。今年は近本を塁に出さないこともポイントになる。

 近大出のドラフト1位ルーキー・佐藤輝明(22)との対戦も楽しみだ。オープン戦で新人最多の6本塁打を放ち、3月27日の開幕2戦目・ヤクルト戦(神宮)では一回に左腕・田口麗斗(25)のスライダーをバックスクリーンに運ぶプロ初安打初アーチ。推定飛距離135メートルで度肝を抜いた。菅野が格の違いを見せつけるか、底知れない潜在能力を秘めた佐藤が打ち砕くか。ペナントレースの行方を左右する対決になる可能性もある。(スポーツライター・梅宮昌宗)

AERA 2021年4月19日号より抜粋