現在ほど、良い日米関係はないと言える。ただ、その裏側の意味が大事だ。米国に信頼、期待される成熟した同盟関係になった以上、日本が米国と共に考え、共に行動する責任や決意について直視することが重要になっている。

──どういう意味でしょうか。

 中国という大国の台頭だ。軍事力だけではなく、貿易や投資、宇宙、5Gなどあらゆる分野で台頭している。かつての米ソ冷戦は、増えすぎた核弾頭の削減を巡る議論が最も重要だったが、経済力では比較にならないほど米国がソ連を圧倒していた。

 中国のパワーが米国を凌駕(りょうが)するとは思わないが、決して無視はできない。近現代の歴史で先例のないほど強い国の台頭だ。経済面ではプラスかもしれないが、尖閣諸島や南シナ海などで、国際社会のルールに合致しないやり方を使って一方的に現状を変更しようとする動きは見過ごすことはできない。

 だからといって、中国を封じ込めろとか、戦端を開けと言っているわけではない。国際社会が協力し、中国が責任ある大国として協調できるよう促すことが重要だ。その中心に日米同盟があると、米国は考えている。だから、菅義偉首相を外国首脳として最初に米国に招いた。

──米国は日本に何を求めてくるでしょうか。

 バイデン大統領は3月3日に発表した、安全保障政策をめぐる「暫定戦略指針」のなかで「responsibility sharing(責任の分担)」という言葉を使った。burden(負担)という言葉ではないので、在日米軍駐留経費といった金銭的な概念よりも広い積極的な意味がある。

 日本にとって中国は重要な隣国だが、米国は唯一の同盟国だ。尖閣諸島は日本の領土であり、その防衛には米国も協力するが、日本がまず一義的な役割を負う。同時に日米安保条約第6条は、在日米軍が地域の平和と安全のためにも駐留するとしている。香港や新疆ウイグル、チベットなどの人権問題や台湾海峡の話も出るかもしれない。ただ、今回は首脳間の信頼関係を築くことがより大事になるだろう。

 私たちは、こうした議論を政治リーダーだけに任せるのではなく、国内でより幅広く、もっと短い時間軸で戦わせていく必要がある。

(構成/朝日新聞記者・牧野愛博)

AERA 2021年4月19日号