「気持ちばかり焦らされ、ここまで熱心にやらなくてもいいんじゃないかとも思いましたが、自粛自粛ばかりで我慢させることも多く、旅行や遊びにも連れて行ってあげられない中、娘の望みを最大限かなえてあげたいという気持ちでした」

 嬉々としてラン活に挑むというよりは、戸惑いながらも巻き込まれていったようだ。モヤモヤを抱く人はほかにもいる。

 都内に住む会社員の男性(36)は、来年度入学予定の長男にはランドセルを購入するつもりはなかったという。

「多くのビジネスマンは機能性を重視して革のカバンからナイロンのバックパックに移行しているのに、なぜ体力がない幼い子に重たいカバンを背負わせるのか意味がわかりません」

■男女の色分けに違和感

 アウトドアブランドの高機能リュックで代用するつもりだったが、長男は同じマンションに住む小学生の登下校姿を見て、ランドセルが欲しいと言い出した。ひと通りカタログを取り寄せると今度は色問題に直面。どの色が欲しいか本人に聞くたびに、違う色を答える。「男の子用」「女の子用」とカタログを分けているブランドがほとんどだったことにも違和感を抱いた。

「息子は青と言うことが多いですが、最近ピンクと言っていて。どんな色でも尊重してあげたいけど、からかわれて嫌になる可能性もありますし。小さい子に自分の発言に責任を持たせるのはどうかとも悩みます」

 最終的には、4月初めに緑のランドセルを購入した。

 色で悩んだのは、今春入学した娘を持つ都内の40代女性も。

 娘は、昨年の緊急事態宣言明けに近所のショッピングセンターでランドセルを初めて背負い、本人はエメラルドグリーンを希望。あまりにも奇抜な色みだったので出直し、その後も水色や赤、茶色などと意見がコロコロ変わるので、「欲しがっていた付録付き雑誌を買ってあげる」と誘導して、高学年になってもしっくりくる茶色を購入した。

「後々、娘に『あの時ママが言ったから』などと言われ、信頼関係も崩れてしまったらどうしようと悩み、ひたすらネットでランドセル選びのエピソードを読み漁り、鬱々とした時期もありました」

(編集部・深澤友紀)

AERA 2021年4月19日号より抜粋