調査を担当した研究チームは、陽性の場合の的中率がやや低かった原因をこう分析する。

「寮生以外が寮のトイレを使った可能性があることに加え、下水検査が陽性だった後の抗原検査を寮生が100%受けているわけではないことも影響しているかもしれない」

 アリゾナ大の成功を受け、米国ではキャンパス内の寮の下水調査をする大学が増えた。米公共ラジオNPRによると、昨年10月下旬の時点で、全米で65大学以上が実施していた。

 ただし、アリゾナ大では秋学期開始当初こそ感染を抑えられていたが、9月7日の祝日の後に感染者が急増した。他大でも下水調査だけで感染を抑制できているわけではない。

■国内新規感染ほぼゼロ

 一方、シンガポール大は新型コロナウイルスの流行が始まって以来、学内感染ゼロだ。これは、下水調査を始める以前から学生ごとに立ち寄っていい区域を決めたり、研究室で1度に1人の研究者しか実験できないよう制限したり、厳しい感染防止対策を講じてきたからだ。シンガポール政府も水際対策を含め厳格な対策を取っている。最近は海外からの帰国者や渡航者を除き、国全体で感染者がほぼゼロの状態が続く。(科学ジャーナリスト・大岩ゆり)

※AERA 2021年4月19日号より抜粋