「私がこれまでに体験したセックスのすべて」が4月、東京・青山で上演される。「True Colors Festival 超ダイバーシティ芸術祭」の一環だ。AERA 2021年4月12日号に掲載された記事を紹介する。
【写真】日本財団True Colors Festivalプロデューサーを務める青木透さん
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カナダ出身の劇作家ダレン・オドネル氏演出の舞台に上がるのは、公募で集められた60歳以上で性的マイノリティーや障害者を含む5人。彼らとダレン氏は、経験してきた性体験をもとに群像劇を練り上げた。内容は「口外禁止」だ。舞台でMCを務める入江陽さん(33)と、芸術祭主催者の日本財団・青木透さん(37)に聞いた。
■性体験切り口に語る
入江陽(以下、入江):MCの依頼をいただいた時、「高齢者の性」というテーマを率直に面白く感じました。普段、似た年代、価値観の人たちと一緒にいることが多い。高齢者や海外の方と関われること自体、僕にとっては既に「ダイバーシティ」です。
青木透(以下、青木):ダレン氏を中心とするアーティスト集団「ママリアン・ダイビング・リフレックス」は、性体験を切り口に、高齢者が人生を語る演目を世界各地で行っています。さまざまな経験を持つ人生の先輩たちは、社会通念の在り方や変化に対して独自の視点を持つ方々ばかり。性体験を切り口に、その視点が浮き彫りになっていきます。
——ダレン氏と出演者は、1カ月間のワークショップを通じて脚本を練り上げた。
入江:僕も参加し、話し合いを重ねながら、センシティブな記憶を出し合ってきました。心を柔らかくするうえで、僕自身の性体験も話しました。面白かったのは、虚構と事実の狭間のグレーな部分が、ダレン氏によって解きほぐされていったこと。出演者には「こう見られたい」という思いが働きがちですが、そこを見抜かれてしまうんです。
——自らのセックスについて語るのは、老若男女、性的指向を問わず羞恥を伴う。
入江:皆が自分の性体験を他人に話し始めると、不思議と自分も語れるようになるんです。世代や性的指向、ジェンダーが多彩な面々が、「あの人がここまで言ってくれたし、僕も」というように、「対話」を通じて羞恥心がなくなっていきました。