※写真はイメージ(gettyimages)
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 若手社員がベテラン社員を教える。メンター制度の「逆」であるリバースメンターが、会社に新しい風をもたらしている。AERA 2021年4月12日号から。

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 新入りという「素人」の感覚が、職場に化学反応を起こすこともある。

■「素人」からのダメ出し

 法人向け電話回線の販売を主とする「三通」(東京都豊島区)は、ウェブでの営業に力を入れることになり、販売手法の転換を迫られた。ノウハウがないと困っていた昨年12月、半年前に入社したばかりの佐藤明奈さん(29)の意見を聞いてみることにした。ウェブマーケティングの経験があったからだ。

 まず、彼女がやり玉に挙げたのは、「クラウドPBX」という同社の基幹サービスだ。

「これが何のことかわかりますか。業界人やそのサービスを知っている人くらいしかわからない言葉ですが、広告にはこのサービス名が銘打たれているんです。こういうものなのだろうと社内的な意見で押し通されていたのです」(佐藤さん)

 実際のサービスは、外出先にいても、スマートフォンで会社の固定電話の着発信ができるというもの。そこで「スマホで東京03が使えます」という趣旨の広告を提案した。

 社長は「僕にその考えはなかった」と驚きつつ、試しにやってみると、契約が2倍に急増したという。佐藤さんは気づいたことを毎週、幹部を前に、プレゼンしている。気付けばリバース・メンタリングをしていた。

「今まで築き上げてきたものに対して、私のようにあまり社内のことを知らない者が言うのはどうなのか、というのはありました。でも、頭ごなしに否定されないのが信頼関係になって、いまは好き放題言っています。飲み会でも意見を言い合えるかもしれないけど、私も上司も忘れてしまうことがあります。この方法なら、正式に提案して、その場で考えてもらえます」

 と佐藤さんは自信を深める。

■社員が「道場主」になる

 若手からの学びにとどまらず、年齢や役職を超えて互いに学び合おうという企業もある。

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