──北京五輪に向けた展望は?

五輪というのは、「前年の世界王者」というタイトルが、必ず心理に影響してくるものです。私は1987年の世界王者として88年カルガリー五輪に金メダル最有力候補として臨みました。「有力」と「最有力」のプレッシャーは全然違います。結弦は、ソチ五輪では「前年王者」のタイトルを持たずに臨みました。逆に平昌五輪は、「前年王者」でした。来年2月に何が起こるのか。結弦はどちらのパターンの心理戦も勝ち抜いてきた人物であることを忘れてはなりません。

──練習拠点を含め、来季の計画はありますか?

まだカナダは入国さえできない状況です。なので、具体的な練習や計画はまったく考えることができません。ただ一つ言えるのは、結弦はコロナ禍の影響を最も受けた状況で1年やってきた選手であり、誰にも言い訳をせず、メダルを手にしました。彼は強くなりました。逆境のなかで結弦が劇的に成長する姿を、私たちは何度も目撃してきました。彼を信じてあげてください。それが今言える、来季のプランです。

(構成・ライター/野口美恵)

AERA 2021年4月12日号より抜粋