同時に、ユジョンは応援してくれる軍人たちに感謝の言葉を贈った。「防弾少年団のファンはARMY。でも空軍の人が、俺たちはReal ARMY、K ARMYだ、と言ってくれて、すごく心強かった」と話す。

 確かに、徴兵制を採る韓国では、学校や職場と並んで軍隊を通じたつながりは強固だ。軍での服務期間は以前より短くなったが、陸軍と海兵隊が18カ月、海軍が20カ月、空軍が21カ月などとなっている。06~08年、陸軍第8師団で勤務したソウル市の会社員(38)は「軍の同期は24時間一緒に生活し、一番つらい訓練を共に経験した仲間だ。お互いに助け合おうという気持ちが一番に湧く相手だ」と話す。今でも韓国軍海兵隊では、除隊した先輩が街中で制服を着た後輩を見かけたら、必ず小遣いを渡すという習慣も残っている。

■半数の国民が軍隊経験

 一方、こうした現象を見ると、日本とは違う韓国独自の文化を意識せざるを得ない。

 日本政府関係者からは最近、「韓国の経済規模は先進国並みになっているのに、どうして先進国のような外交ができないのか」という声をよく聞く。その理由の一つは、北朝鮮にばかり目を奪われ、韓国が地域の安全保障に貢献していない実態がある。3月にあった米国のブリンケン国務長官とオースティン国防長官の日韓歴訪の際、韓国は米国が最も重視する対中国戦略で歩調を合わせられなかった。

 ただ、韓国と北朝鮮は依然、休戦状態にある。国民の半数が軍隊生活の経験があるなか、どうしても北朝鮮ばかりに目が向くという事情も無理からぬところはある。

 Brave Girlsの奇跡の復活からは、そんな日韓の違いを読み取ることもできる。(朝日新聞記者・牧野愛博)

AERA 2021年4月12日号