初期のメンバーは全員脱退したが、地道に慰問活動などを続けた。メンバーは応援してくれる軍人たちに感謝の言葉を贈る(撮影/写真部・高橋奈緒)
初期のメンバーは全員脱退したが、地道に慰問活動などを続けた。メンバーは応援してくれる軍人たちに感謝の言葉を贈る(撮影/写真部・高橋奈緒)

 鳴かず飛ばずだった韓国の女性アイドルグループ。解散を話し合った翌日、突然、人気が爆発した。背景には韓国独自の文化や事情があった。AERA2021年4月12日号に掲載された記事で、その経緯と背景を紐解く。

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 韓国音楽界で今、話題を独占しているのが、崖っぷちから復活を遂げた4人組のガールズグループのBrave Girlsだ。長い間芽が出ず、解散を話し合った翌日にアップされたユーチューブをきっかけに、2017年3月に発表した「Rollin’」が大ヒットした。復活を後押ししたのが、Real ARMYの存在だった。

■戦闘服の軍人が熱狂

 復活の烽火(のろし)となったユーチューブは2月24日にアップされた。Rollin’を熱唱する姿に、様々なコメントを重ねた映像だった。複数の放送局のなかで、目を引いたのが、韓国・国防広報院が運営する国防テレビの番組「慰問列車」からの映像だった。Brave Girlsは空軍第1戦闘飛行団、陸軍第37保衛師団などを慰問公演で訪問。戦闘服を着た若い軍人たちが両手を振って熱狂する姿が映し出された。同時に、「ミルボード(militaryとbillboardを合わせた造語。軍隊内のヒットチャート)だ」「入隊してすぐ先輩に教えられ、除隊前に後輩に教えた」などというコメントがずらりと並んだ。この映像は3月31日現在で、1472万回以上も再生された。

 同時に、Rollin’の人気に火がついた。韓国メディアによれば、2月第3週に比べ、第4週のストリーミング再生数は707%、その翌週は1万7842%に激増。ユーチューブを見た軍人やMZ世代と呼ばれる20~30代の若者が中心とみられる。3月半ばには、韓国最大の音楽配信サイト「MelOn」で1位に輝いた。

 Brave Girlsは11年に5人で結成されたが、初期メンバーは全員脱退。現在のミニョン、ユジョン、ウンジ、ユナは16年に加入した。3月3日に収録されたユーチューブ番組で、ユジョンは「私たちのチームは若くない。(韓国式の数えで)32、31、30、29歳。今年に入って、メンバー同士で、もうだめだ。早く整理した方が良いという話をしていた」と語った。解散の話が出たのは、復活の契機になったユーチューブがアップされた前日の2月23日だった。ユジョンは、「みんなで、人気が出ても、一瞬で終わると話していた」とも語る。

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