米国が2001年の9.11テロ事件の後にアフガニスタンを攻撃すると、新疆はアフガニスタンやアルカイダの拠点パキスタン北西部と山越えの道でつながっていることから、ウイグル人の中にはイスラム武装集団に参加した者も少なくなかった。「テロとの戦い」に懸命だった米国は、昨年11月に指定を突如取り消すまで新疆の独立派「東トルキスタン・イスラム運動」をテロ組織に指定していた。

 新疆ウイグル自治区西端のカシュガルでは08年、警察署が襲撃され、警官17人が死亡。09年には自治区の首都ウルムチでウイグル人と漢族の両デモ隊が衝突し197人が死亡、1700人が負傷した。13年には北京の天安門を自動車で突破しようとし5人が死亡。14年3月には雲南省昆明駅で刀を持った8人が無差別にその場にいた人を襲って死者34人、負傷者143人が出た。同年4月にはウルムチを習近平(シーチンピン)国家主席が視察した際に自爆テロで3人が死亡、79人が負傷した。

■シリア内戦にも参加

 11年に始まったシリア内戦では多数のウイグル人がイスラム過激派の反政府部隊に参加し、凶悪な「イスラム国」にもウイグル人がいたことは身代金を払って解放されたデンマークの写真家の話で明らかだ。

 中国から密出国して外国で戦闘したウイグル兵が帰国すると出入国法令の違反で逮捕、拘束するのは当然で、日本でもそうするだろう。だが、違法行為をしていなくても、中国の言う「宗教的に過激派に染まった人物」を収容して再教育するのは人権無視の非難を免れない。

 ただ、米国がアフガニスタンやイラクなどで敵兵やイスラム主義の活動家を捕らえ、イラクのアブグレイブ刑務所で拷問したり、キューバのグアンタナモ米海軍基地で檻(おり)に入れ「米国内ではないから米国の法律は適用されない」として裁判もせず拘留を続けるのは極端な人権無視だ。

 国連人種差別撤廃委員会では18年8月から「ウイグル人約100万人が拘束されている」との説が出ているが、「信頼できる報告を元に」というだけで出所は不明だ。これは99年のセルビア東部のコソボで「アルバニア系住民50万人が行方不明、死亡の可能性あり」と米国務省が発表したことを思い出させる。

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