野上さんはすぐに商品化プロジェクトを立ち上げ、クラウドファンディングで資金を調達した。竹粉と合わせる素材に選んだのはコーヒーかす。お弁当が断然美味しそうに見える色味が出るからだ。名前も「BENTO box COFFEE」に決まった。

「これまでお弁当箱は、デザインや耐久性などで選ばれていたと思いますが、最後は地球に戻ってくれる素材を選ぶ。そんな考え方が広まるきっかけになればうれしいです」(野上さん)

 竹は今、国内外で地球と体に優しい素材として脚光を浴び、活用が広がる。しかし20年以上前から国内の竹害問題に取り組んできた企業もある。竹100%の紙を国内で唯一作っている中越パルプ工業だ。

 同社の鹿児島県の工場に、近隣のタケノコ農家から使い道のない大量の竹の買い取りを相談されたのが始まりだ。竹は木材に比べて運搬コストが割高。取れる繊維も少ない。しかし社員が「地域のために」と立ち上がった。現在、同社は日本の竹消費量の約半分を購入し竹紙を製造。取り組みを社会に知ってもらうためノートや折り紙も作る。営業企画部の西村修さんは言う。

「ジレンマはあります。文房具店で竹紙ノートのことを話せば、その意義に共感して買ってくれる方は少なくない。でも私たちは文房具メーカーではないので、ノートの販売に人員は割けません。ワークショップなどを地道に開くのみです」

 西村さんは竹を使えば森林伐採をせずに済むといった安易な説には異議を唱える。地球上にある竹を全部使っても、膨大な紙需要は満たせないからだ。

「木は数十年サイクルで再生するのでいかに上手く管理していくかが肝。まずは、問題の本質を見極めてほしい。その上で、社会の課題を自分事にして、行動を起こす人が一人でも増えてほしいと願っています」

*プラントファイバーセラミック(R)は特許権を有する株式会社アミカテラの登録商標

(編集部・石臥薫子)

AERA 2021年4月5日号