さらにうれしい「おまけ」も。東京圏から条件を満たして移住した人に出る国の「移住支援金」は世帯で最大100万円。伊藤さんはこう話す。

「21年度からは『東京の仕事を続けつつ地方に移住した人に最大100万円を交付する』仕組みもできます。FIREを見すえて移住する人にとって、ハードルはさらに下がるでしょう」

 親の遺産、不用品の売却などで得られる臨時収入なども加味して、足りない金額は運用で計画的に増やそう。

■半分FIREも選択肢

 FIREは、完全にリタイアすることだけが正解ではない。

「今、幸せですね」としみじみ語るのはブログ「アラサーdeリタイア」を運営するちーさん(30代後半)だ。

 新卒で建築関係の仕事に就くと、株式投資や貯蓄に励んで20代で資産1千万円を達成。アベノミクス相場で日本株が値上がりし、33歳で資産は3千万円まで増えた。その直後、結婚を機に会社を辞めてからはフリーで仕事をしつつ、毎年の配当収入70万~75万円で夫と2分の1ずつ負担している生活費約15万円の半分近くをまかなう。いわば「サイドFIRE」だ。

「大切なのはFI(経済的自立)で、RE(早期退職)は人それぞれだと思います。不妊治療をしているのですが、精神的にも肉体的にも金銭面でも本当につらい。治療がつらくて休んでいても、資産から得られる配当金が毎月、入ってきます。自分が作った資産が自分を支えてくれる。もちろん、夫も大切ですが、夫と資産、よき伴侶2人に支えられている感じです」

(ジャーナリスト・安住卓也、編集部・小長光哲郎)

AERA 2021年4月5日号より抜粋

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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