エルさんのFIREを支えたのは株式投資だ。入社2年目で株式投資を始め、割安な時期に買ったファーストリテイリング株が1999年の「フリース・ブーム」で急騰したタイミングで売却、初めて大きな利益を得た。これが株にのめり込むきっかけになったという。

 01年からは「レバレッジ投資」も行った。マンション購入に際し、頭金を少なくして住宅ローンをあえて最大限借り、余った資金で株式投資。1%を下回るほどの低水準が続く住宅ローンの金利を上回るリターンを得て、ローンは11年に完済した。

「投資信託などで分散投資もするのであれば、投資経験が少ない人でも十分使える技です。定期的な収入がある会社員のある意味での特権を、とくに年収などの条件で恵まれている人なら生かさない手はない」

 15年以降は株式投資の軸足を日本株から米国株に移した。現在の投資は「米国株7:日本株3」の割合で、配当金収入と、株の値上がりによる利益の両にらみという。

「配当金と値上がり益の合わせ技で、トータルでプラスになることを意識しています。いまは配当金収入は200万円台で、それだけでは当然、4人家族の生活費はまかなえませんし、値上がり益による収入の割合の方が断然大きいです」

 エルさんの会社員時代の年収は1千万円を超えていた。日本株の短期売買などで値上がり益が得られれば、収入が当時の月収を上回ることもあるという。

「投資での利益は会社員時代から出していたので、給料がなくなった分だけ収入は減っています。贅沢できる理由はないですね。でも『節約生活』みたいなことはしておらず、生活費は会社員時代とほぼ変わりません」

(ジャーナリスト・安住卓也、編集部・小長光哲郎)

AERA 2021年4月5日号より抜粋

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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