■継続したサポートを目指す新プロジェクトもスタート

 急ピッチで生活再建を進めた行政には感謝しているし、被災地以外の人が10年を機に思い返してくれるのはうれしい。それでも、「区切り」とされるのは違和感がある。

 そんななか、「10年で終わらせない」という思いも広がる。クラウドファンディングサイト「READYFOR」は3月11日、「3.11復興に『よりそう』プロジェクト2021」と題したキャンペーンを始めた。READYFORが発起人となって1千万円を目標に資金を集め、今も現地で活動を続ける支援団体に分配するという。

 同社代表の米良はるかさんは言う。

「10年を『区切り』にしたくない。10年で終わりじゃないというメッセージを発したかったんです。自分たちの意志として被災地に向けた活動を続けていき、支援してくださる方にとってもともに歩み続けるきっかけにしたいとスタートしました」

 11年、東日本大震災直後に事業をスタートしたREADYFORでは、これまで1500件以上の震災関連プロジェクトが立ち上がり、約11億円を集めてきたが、同社が発起人となり資金を集め、分配するプロジェクトは、震災関連では初めての取り組みだ。

「未来に向けて必要な取り組みでも、10年たったいま改めて注目されるかというと難しい活動に対して、お金と思いを届けたいと考えています」(プロジェクトを担当する同社小谷なみさん)

 また、サントリーホールディングスも被災3県の地方創生や活性化を目指す取り組みを対象にした助成「みらいチャレンジプログラム」を新たに始める。同社がこれまで続けてきた震災復興支援活動「サントリー東北サンさんプロジェクト」の一環だ。

「一歩一歩復興が進む中、これまでの活動も継続しつつ新しい活動や挑戦を応援することで、復興・再生のサポートができればと考えています」(同社)

 震災から10年。あの日を思い返し、次なる災害に備えるきっかけとして胸に留めつつ、決して終わりではない。これからも足を運び、伝え続けたい。(編集部・川口穣)

AERA 2021年4月5日号

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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