すでに2003年には保健福祉省の傘下に疾病管理本部を設け、伝染病の調査や管理、対策を一元化。今回の事態を受けて、昨年9月に同本部を疾病管理庁に昇格させた。権限が集中しているため、新型コロナの感染者の早期発見や病床確保、ワクチン管理などが効率的に進んでいる。

■自国の臨床試験なし

 これに対し、日本では、保健所や大学病院、研究機関などの監督権限が、厚労省や文部科学省に分かれる。最近では、主に国立感染症研究所だけが担っている変異ウイルスの種類を調べる解析検査を巡り、自民党などから、地方機関や大学、企業などにも担わせるべきだという意見が出ているが、十分な門戸開放には至っていない。

 また、日本は過去の薬害問題の教訓などを踏まえ、ワクチンの承認にあたって国内の臨床試験を義務づけている。現時点では、2月14日に特例承認された米ファイザーと独ビオンテックが共同開発したmRNAワクチンだけが接種可能だ。ただ、需要が逼迫(ひっぱく)しているため、域内で製造されたワクチンの輸出を事前許可制とした欧州連合(EU)の動き次第では、供給が滞る可能性もある。

 他方、韓国は海外で承認されたワクチンを自国内の臨床試験を経ずに、そのまま使用できる。韓国は2月10日、英アストラゼネカなどが開発したワクチンを承認。同月24日からは受託生産している韓国内の工場からの出荷も始まった。

 アストラゼネカなどが開発したワクチンを巡っては、接種後に血栓などが確認された例があるとして、独仏などが接種を一時見合わせる事態も起きた。だが、韓国疾病管理庁の鄭銀敬(チョンウンギョン)長官が19日の国会答弁で、ファイザーとアストラゼネカのワクチンについて「効果や安全性に大きな差はない」と答弁。鄭氏は不眠不休で新型コロナ問題への対応に当たってきた責任者で、国民の信頼も厚い。さらに、文大統領夫妻が23日、アストラゼネカのワクチンを接種するなど、現時点で国民の不安を取り除くことに懸命になっている。

 万が一の事態を想定して、「石橋をたたいて渡る」というのが日本の伝統的な手法だとすれば、韓国のそれは「パルリパルリ(早く早く)文化」だとされる。「漢江の奇跡」と言われる高度経済成長を実現した朴正熙(パクチョンヒ)政権が作り出した文化だ。

次のページ