清水美憲さん/専門は数学教育学。日本数学教育学会会長。OECDによる生徒の数学的リテラシーの評価で専門家委員を務める(本人提供)
清水美憲さん/専門は数学教育学。日本数学教育学会会長。OECDによる生徒の数学的リテラシーの評価で専門家委員を務める(本人提供)

 1月、コロナ禍で行われた「初めての大学入学共通テスト」は、現役生には2つの試験日が設けられた。センター試験と何が変わり、今後の課題は何か。AERA 2021年3月29日号は、「大学入試のあり方に関する検討会議」のメンバーの一人で日本数学教育学会会長の、清水美憲・筑波大学大学院教育研究科長に「数学」のテストの評価、及び検討が重ねられている「数学の記述式問題」の導入の見通しについての考えを聞いた。

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「数学はプレテストよりセンター試験に戻った感じ」という声が、第1日程を受けた受験生から上がったようです。従来のセンター試験に近いタイプの問題の中に、新しいタイプの問題が少し加わったような印象でした。第2日程のほうがより試行調査(プレテスト)に近い感じです。

 共通テストらしい問題は、数Iの第1日程で出題された、100メートル走を題材にピッチ(1秒当たりの歩数)とストライド(1歩当たりの距離)の関係からタイムを計算する問題や、第2日程の太郎さんと花子さんが登場し文化祭に出店するたこ焼きの価格を検討する問題などがあげられます。ピッチとストライドの問題は2次関数の問題ですが、日常の場面を数学の舞台に載せ「問題解決のプロセス」を受験生に踏ませるのが狙い。共通テストの一番の特徴だといえます。

■何が測れたか検証必要

 大学入試センターの問題作成方針には「問題解決の過程を重視する」ことに加え「問題を見いだすこと、構想・見通しを立てること」「解決過程を振り返り、得られた結果を意味付けたり、活用したりすること」などを求めると示されています。ペーパーテストでこうしたことを問うのは、実は簡単ではありません。日常の場面を数学の舞台に載せたり、「これまでの考察を振り返ると~」といった問題を数I、IIで出題したりするなどのチャレンジが見られ、一定の達成は得たと思います。

 また、数Iは記述式が見送られたものの試験時間はセンター試験より10分長くなりました。しかし場面を読み取ったり、与えられたデータの特徴を一つひとつ丁寧に読み取ったりすることなどが求められ、時間的に厳しい受験生もいたのではないかと思います。

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