一方、「ブイクック」代表の工藤柊(しゅう)さん(22)は、ヴィーガンに特化したサービスを展開することで、「誰もが気軽にヴィーガンを選択できる社会」を実現したいと考えている。
工藤さんがヴィーガンを実践し始めたのは高校3年生のとき。車にひかれ放置された猫の死体にショックを受けて動物倫理を学び始めたのがきっかけだ。さらに幼いころから関心を持つ環境問題にも、ヴィーガンが深く関わっていることを知った。
「1食分をヴィーガン食にするだけでも、自動車の走行距離9.6キロ分のCO2が削減できたり、水の消費量を370リットル抑えられたりするというデータもあります。普段の食事を変えるだけで環境負荷が減らせるのであればと思い、次の日からヴィーガンを始めました」
だが、初めは何が食べられるのかがわからず、塩おにぎりや野菜の水炊きばかり食べていた。その経験から、日本初のヴィーガンレシピ投稿サイト「ブイクック」を設立する。
■2200のレシピ投稿
「卵を使わないオムライスや豆腐で作るバターなど、植物性食品だけで作れる料理が現時点で2200レシピ投稿されていて、毎月約9万人に利用いただいています。最近は、健康やダイエットのほか、体のパフォーマンスを高めたいとヴィーガン食を採り入れるアスリートも増えているんです」
3月から、ヴィーガン総菜のデリバリーサービス「ブイクックデリ」も開始。サブスクリプションによる受注生産で12メニューから6食ずつ宅配され、初月は約2千食を配送予定だ。
「ヴィーガンが孤立や息苦しさを感じることなく、楽しく食卓を囲める。他者を思いやって行動する人が生きやすい社会を実現するために行動したいです」
学生の起業動機はそれぞれだが、共通していたのは「より良い社会に」との思いだった。この思いこそが学生ベンチャーのエネルギーの源だ。(ライター・澤田憲)
※AERA 2021年3月29日号より抜粋