国軍の弾圧が強まるにつれ、ミャンマーのZ世代の行動や心理にも変化が生じている。転機は「エンジェル」のニックネームで知られていたチェーシンさん(19)の死だ。彼女は3月3日に治安当局に頭を撃たれて亡くなるまで、TikTokに動画を投稿し、インフルエンサーのような活躍をしていた。

「コスプレや歌やダンスで運動を盛り上げる機運は、エンジェルさんの死を知った瞬間に消えました。自分もいつ殺されてもおかしくない、という現実にZ世代の一人ひとりが直面し、国内の若者だけでは手に負えない、と実感した瞬間だったと思います」(同)

 今は大勢での街頭デモを控え、各自がSNSで軍の動向や犠牲者に関する情報を発信する分散型の運動に戻ったという。

■軍政を終わらせる「Z」

 ピォーさんはZ世代の特徴について主に3点を挙げる。

 呼吸をするように情報のインプットとアウトプットを繰り返す。いろんなことを「自分ごと化」して捉える能力に長け、共感をもとに行動することが多い。国境や人種を超えて世代でつながれる、ことだという。

 その最大のツールがSNSだ。ピォーさんは米国で、SNSのたった一つの投稿で社会が動くのをブラック・ライブズ・マター(BLM)運動などを通じて目の当たりにした。そのことが、今の活動につながっている。

「彼らは次世代に自分たちと同じような思いをさせたくない。だから闘わなくては、という思いが強い。Z世代は軍政の悪しき風習を終わらせるためのZなんだという人もいます」

 こう説明するのは、ミャンマーの同世代の動向に詳しい都内の大学生の男性(20)だ。

 東京外国語大学でビルマ語を学ぶ学生有志が3月4日、デモ参加者への弾圧停止などを求める署名を外務省に提出した。男性はこのなかの一人だ。フェイスブック(FB)やメッセンジャーで連日、現地の友人らと連絡を取り合っている。

 アルファベットの最後が「Z」であることと絡めた、軍政と対峙する覚悟の表明はZ世代の自負の強さもうかがえる。だが当然、不安ややりきれなさを抱える人もいる。男性は言う。

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