ヤンゴンで行われた抗議デモ/3月13日、ヤンゴン(gettyimages)
ヤンゴンで行われた抗議デモ/3月13日、ヤンゴン(gettyimages)
ミャンマー国軍への抗議デモが東京でもあった。プラカードには「国連が行動を取るにはいくつ遺体が必要なのか?」と書かれていた/3月14日、東京都渋谷区 (c)朝日新聞社
ミャンマー国軍への抗議デモが東京でもあった。プラカードには「国連が行動を取るにはいくつ遺体が必要なのか?」と書かれていた/3月14日、東京都渋谷区 (c)朝日新聞社

 国軍のクーデター後、戒厳令が発令され、緊迫の度が深まるミャンマー。現地人権団体によると、治安部隊の発砲などで25日までに計320人が殺害された。27日だけで100人以上殺害された、との報道もある。SNSを通じて価値観を共有するZ世代が国境を超え、抵抗運動を支えている。AERA 2021年3月29日号の記事を紹介する。

【写真】東京でのミャンマー国軍への抗議デモ

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 クーデターで権力を掌握したミャンマー国軍の武力弾圧は日に日に強まっている。弾圧に反対して、ミャンマー国内外で起きている抗議運動。主役として注目されるのがZ世代だ。

 1990年代半ば以降に生まれた10~20代は、ミャンマーでも2013年以降の通信の自由化の流れを享受してきたデジタルネイティブが多い。Z世代の存在が際立ったのは2月1日のクーデター発生からの数週間だ。

 市街地の抗議デモで伝統衣装姿やアニメ、映画のキャラクターのコスチュームを身にまとうなど、「SNS映え」する運動を展開。「スパイダーマン」や「鬼滅の刃」のヒロインに扮した斬新なデモは日本や欧米のメディアで盛んに報じられた。

「今回のクーデターで引き起こされた事態によって、ミャンマーのZ世代の能力が最大限に引き出されたと思っています」

 こう話すのはミャンマー人の両親のもと、東京で生まれ育ったピォー豊さん(23)だ。

■自由を失うほうが怖い

 高校3年生の1年間はヤンゴンのインターナショナルスクールに通い、16~20年に米国の大学に留学した。帰国後、日本でZ世代向けビジネスを支援する広告会社を経営。クーデター後は、ミャンマーのZ世代が集めた情報をインスタグラムにアップする際、共感を得やすいデザインなどにアレンジするブランディングをボランティアで担う。

 ピォーさんがミャンマーでデモに参加している同じ年の友人に「怖くないの」と問うと、友人は「もちろん銃は怖いけど、自由を失うほうがもっと怖い」と答えたという。

「その言葉に尽きると思いました。自分たちが選挙で示した民意が無駄になってしまうだけでなく、自分らしくいられる社会を歪められるのが耐えがたい、という思いが彼らをデモの最前線に駆り立てているのだと思います」(ピォーさん)

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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