プレテストでは著作権法や生徒会の規約が大問の素材として出題されました。記述式が見送られ、大問数が一つ減ることになったときに、「実用的な文章」の出題はあるのか、あるとしたらどのような文章かなど、素材の種類に関心が集まりました。それは当然のことだと思いますが、一方で、そうした「素材」ベースの発想にとらわれると本質を見失います。とりわけ、2022年度から高校の学びは新学習指導要領に切り替わり、「資質・能力」ベースの育成、評価に変わります。「どのような力」を測るかが作問の起点になり、「素材」はその狙いを実現するものとなる。ですから「身につけるべき力」をきちんと見極め、多様なテキストに触れることが大事です。ゆくゆくはプレテストで使われたような法令文や実務的な文章が題材になる可能性は十分にあると思います。

 国語に限らず「筋道立てて論じる力」を測るために、記述式問題は重要です。しかし共通テストへの25年以降の導入については、見送りの要因となった採点の質と公平性の課題に解決の見通しが立たない限り、実施は難しいと考えます。各大学がアドミッションポリシーに応じて入試に工夫を凝らしていくのが現実的でしょう。大学の初年次教育で高校との接続を意識した記述力の育成に取り組むこともより大事になります。

(構成/編集部・石田かおる)

AERA 2021年3月29日号より抜粋