島田康行さん/専門は国語教育学。アドミッションセンター専任。著書に『ライティングの高大接続』(共著)など(本人提供)
島田康行さん/専門は国語教育学。アドミッションセンター専任。著書に『ライティングの高大接続』(共著)など(本人提供)

 今年1月、「思考力・判断力・表現力」の一層の重視を打ち出す、初めての大学入学共通テストが行われた。センター試験とどう変わったのか。AERA 2021年3月29日号は、有識者からなる「大学入試のあり方に関する検討会議」の専門家の一人である島田康行・筑波大学人文社会系教授に、「国語」のテストの評価、及び検討が重ねられている「国語の記述式問題」の導入の見通しについての考えを聞いた。

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「安全運転」に徹したというのが初年度の国語の印象です。センター試験から踏襲するべきところは踏襲し、部分的に新傾向の問題を採り入れることで、円滑な移行に重きを置いたのでしょう。

 共通テストを象徴する問題は、大問2の小説「羽織と時計」の問6です。新聞に掲載された批評を資料として提示し、読み合わせる問題です。複数資料の提示はセンター試験にはなかったもので、テキストの理解や解釈にとどまらず「活用する力」も問おうとしているのが特徴です。

 試行調査(プレテスト)では資料のボリュームが大きかったこともあって、「測ろうとしているのは情報処理力で、読解力でないのでは」といった声も聞かれました。しかし国語は「読む」だけでなく「話す・聞く」「書く」の各領域をバランスよく学ぶ教科です。必要な情報を複数の資料から得ることは、全ての領域のベースになるもので、大学での学習にも欠かせません。

 受験生に「思考の過程」をたどらせる、こうした問題は共通テストの目玉の一つで、今後も出題されると思います。しかし今回は「初めの一歩」で完成形からはまだ遠い。継続的に改善を重ねながら洗練を目指していくのでしょう。

■多様なテキスト触れて

 加えて、「新聞の書評」もセンター試験では扱われなかったタイプの文章です。大学入試センターは「実用的な文章」を出題方針に示しましたが、具体的に何を指すのか、受験生への周知が十分でなかったと思います。学習指導要領の解説は、「実用的な文章」を「具体的な何かの目的やねらいを達するために書かれた文章」と説明していますから、「新聞の書評」のようなものも対象になりうるわけです。

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