まずは、大手3社に比べて基地局の整備が進んでいないことによる通信品質の低さだ。楽天モバイルを使う30代の男性会社員は「成田空港のターミナルビルなど広いビルや高層ビルではつながりにくい。驚いたのが楽天本社がある東急田園都市線の二子玉川駅で全然つながらなかったことだ」とぼやいた上で、「やはり楽天モバイルだけを使うのは厳しい。大手の回線と並行して使わないと、通信が途切れる恐れがあるのは心配だ」と話した。

 楽天モバイルは今年の夏には人口カバー率96%まで基地局整備を進めると表明しており、12日に発表した日本郵政や米ウォルマートなどから受ける出資金2400億円を基地局整備に投じると強調。懸念される通信品質の改善に全力を注ぐ考えだ。

 もう一つ、大手3社から楽天に乗り換える際には、大半の人は2年契約の解約金が必要となることも注意点だ。ちょうど2年契約の更新時期であれば不要だが、それ以外の場合でも解約金を低く抑える方法がある。

 KDDIとソフトバンクは19年から、2年契約の自動更新がなく解約金も従来の9500円から1千円以下にした新たな2年契約プランを提供している。3月中にこの新たな2年契約プランに変更して、4月に入ってから楽天に乗り換えるという「裏ワザ」を使えば、解約金は最低限に抑えられる。ただ、ドコモからの乗り換えには依然として9500円が必要だ。

■小容量なら格安事業者

 大手各社にお株を奪われた形になっているのが、これまで値下げを引っ張ってきた格安スマホ事業者だ。各社ともahamoに押される形で値下げに踏み切っており、特に小容量プランに注力している事業者が多い。

 ソニー系のnuroモバイルは4月1日から、3GBで720円というUQの半分以下のプランを開始する。格安スマホの老舗IIJmioも、2GBで780円のプランを4月1日から開始する。

 格安スマホは、利用者が多い時間帯に通信速度が落ちるなど回線品質では大手各社より劣っているとされるが、メリットもある。端末とのセット割引が法規制の対象外となっている事業者が多いため、以前の大手3社のように新しいスマホをセットで安く購入することも可能だ。データ通信をさほど使わず、iPhoneなどの最新機種にこだわらない人にとっては有力な選択肢になる。

 今回のドコモのahamoを発端とした値下げをめぐっては、NTTと総務省の接待報道以降、「携帯料金値下げの代わりにドコモの子会社化を認めてほしい」という密約を両者が結んでいたのではという声も業界内で聞かれる。ただ、どういう経緯をたどった値下げだとしても、消費者としてはその恩恵にあずからない手はないだろう。デメリットや落とし穴に気をつけながら、自分に最適の料金プランを模索することが重要だ。(ライター・平土令)

AERA 2021年3月29日号